医療ルネサンス
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【いのちの値段】「適正」を探る(5)行き過ぎ手術? 痛み残る

【いのちの値段】「適正」を探る(5)行き過ぎ手術? 痛み残る

腰の痛みについて、整形外科医の土谷さんから説明を受ける女性。歩く時は支えにバギーを使う(葛西中央病院で)=奥西義和撮影

 腕のよい整形外科医が院長になったらしい。女性(78)は地元の葛西中央病院(東京都江戸川区)を訪ねた。腰が激しく痛み、座り込んでしまう。2014年11月のことだ。

 撮影したレントゲン写真を見て、院長の土谷明男さん(44)が、驚いた顔をしたような気がした。

 その4年前、別の病院の脳外科で腰部脊柱管 狭窄きょうさく 症の手術を受けた。職場のコールセンターで同僚が「いい先生がいるみたい」と薦めてくれた。焦っていた。煩わしい腰痛を完璧に治し、まだ一線で働きたい。

 だが、半年後、消えていた痛みがぶり返した。しばらくすると、病院は巨額の赤字を抱えて破綻。執刀医と連絡は取っていない。

 背骨の腰部分(腰椎)は、5個の骨が縦につながっている。腰椎の中央にはトンネル状の神経の通り道「脊柱管」がある。加齢により腰椎や軟骨、 靱帯じんたい などが変形すると、脊柱管を狭め、なかの神経を圧迫する。

 手術では、腰椎5個のうち4個の背中側を縦に切ってごっそりと取り、空いた空間にセラミック製の人工骨を四つ、かませた。土谷さんにはこの手術が「やり過ぎ」と映った。

 症状を引き起こす神経の圧迫部分だけを取り除く手術法がある。それなら、腰椎を4個も手術する必要はなく、人工骨もいらない。下肢のしびれなど危険な症状がないのに、手術をする発想も疑問だ。

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