医療ルネサンス
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【いのちの値段】「適正」を探る(6)「看取り」のはずが回復

 脳 梗塞こうそく を患い、救急病院にいた渡辺てる子さん(96)は、「瀬戸みどりのまち病院」(愛知県瀬戸市)に転院した。昨年7月、娘の森本 臣世たみよ さん(70)と信夫さん(71)夫妻の決断だった。

 この病院には、長期入院の高齢患者が入る「療養病床」(146床)がある。

 救急病院で、夫妻は 看取みと る覚悟をした。体が弱ってから、てる子さんは「もう十分生きた」が口癖だった。不自然な延命治療はさせたくない。水分と最低限の栄養を入れた点滴以外の治療はせず、「もってあと1か月」と言われていた。

 夫妻の心が乱れたのは、てる子さんが小さなゼリーを口にふくんだ時、喉仏がかすかに動いたからだ。十分な栄養ではないが、口から食べられるうちは食べてほしい。親のいのち、簡単には諦められない。

 転院時の書類の引き継ぎ事項には、「お看取りで」と書かれていた。

 ところが、信じられないことが起きた。転院後、高カロリーの輸液を一時的に入れて体力をつけ、ベッド上に座る練習や、とろみをつけたお茶をのみ込む訓練を続けると、てる子さんがみるみる回復したのだ。ペースト状の煮物や焼き魚も食べるようになった。ひ孫には、「よう来たな」と笑顔まで見せる。諦めなくてよかったと夫妻は思った。

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