ド素人のRPG制作現場潜入レポ

~⑤感動を紡ぐモノ ライターのお仕事~

こんにちは。
こんにちは。ケムコ社員Nです。趣味は料理です。 仕事がつらくなってくると、おもむろに丸鶏を凧糸で縛りながら 「いまこの日本に鶏を縛っているゲームクリエイターは他にいないはずだ! 唯一つまり至高の存在!!」などと妄想に浸ったりします。 そうでもしなきゃ辛いこともあるんや。その理由は今回わかります。

【ゲーム制作における一般的な職種一覧】

☑プランナー(企画)
☑ディレクター(監督)
☑プログラマー(制作)
□ライター(作文)
□グラフィッカー(作画)
□コンポーザー(作曲)
□ボイスキャスト(声優)
□デバッガー
□マーケター

宣言通り、今回はライターです。
枠の都合上ライターと書きましたが、雑誌記事とかを書いてるひとがイメージされてしまいますね。 あるいは某悪の組織に改造されたりベルトさんを装備したりして変身して戦うヒーロー。うちにはそっちのゲームもあるので良かったら遊んでってください。
実のところ、ゲーム会社ではライターの仕事は山のようにあります。
しかしながら、彼らはゲーム会社の中で、もっとも安い命でもあります

いや、これは正確じゃありませんね。正しくは、こうです。

ライターほど格差の大きな職種はない。

唐突にスペック紹介

突然ですが、かつてド素人であり、苦難のはてプランナー、ディレクター、そして限定的なプログラマ(社内ツールやサイトをいくつか作りました)といった職能を身に付けてきた筆者が、 一応、入社時に既に持っていた技能が、ライター能力・・・いわゆる物書きでした。
といっても何かの検定があるわけでもなく、投稿歴も受賞歴もないんですけど。
若い頃から大学まで小説とかを書いてきたってくらいです。入社時にえらい人から「ゲームの文章とそれ以外の文章は違うから。なめたらダメだから」と釘を刺されており、 確かにそうかも、おごってはならぬ、と己を戒めたものです。

5年働きましたが普通に自分の腕で通じました。ゲーム業界チョロいです※。
※コラムを面白くするために少々誇張して書いておりますが引き続き謙虚に仕事して参りますのでケムコ重役各位におかれましてはご笑覧いただければ幸いです。

別に文章が良ければ即お金が稼げるわけじゃないんですけどね。 ベースの企画のよさ、プログラム、グラフィック、サウンドその他の完成度、売り方・・・全てが相まってゲームの売り上げが決まりますので、ライターだけが毒煙吐き散らしても何にもなりません。

しかしながら、他の業種と比べてライターの良し悪しは判定が難しいんですよね。絵や音と比べて直観的に分かりづらいですし。 文章の良し悪しを見られる人はそれなりに少ないです。だから結局、そのライターが担当したゲームがどれだけ持続的に当たったかみたいなのを判断されるんですよね。
このせいで、世間にはメガヒットメイカーであるスーパーライターそれ以外の無名ライターの大群という2種類しかいない状況が生まれます。
業界がもう少しライターに優しい場所になってくれないものかと切に願う次第です。

というわけで、今回はもっと皆さんにライターとは何だということを知っていただきたいと思います。主に自分が生きやすい業界をつくるために。

ライターとは

ただ文章を書く、と書くと多くの人がこう言います。

「文章くらい、俺にも私にも書けるし」

と。
そうなんですよね(そうなのかよ)。
少なくともある程度サマになる絵を描くには相当な努力が要ります。音楽を作るには膨大な経験や独学、あるいは音楽理論の知識が必要です。 プログラムは言うに及ばず。このように、モノづくり系職種には少なからず必須技能がいくつか設定されているのです。
ところが、文章ならば誰だって書けます。
使用するITスキルもかなり限定されています。グラフィッカーならAdobe CreativeCloud(Photoshop, Illustrator, After Effectsなど)をペンタブレットでちょちょいと使いこなし、 プログラマーならEclipseや各種さまざまなSDK、ライブラリ、モジュール類を謎の海外サイトからぼんごぼんご落としてゲームを作りあげていきます。 コンポーザーはDAWに加えて楽器演奏能力を持っておられることが多く、鍵盤やギターの演奏がモニタ内でコードに変わっていくのは魔法のようです。

ライターは、テキストエディタ(メモ帳みたいなやつ いやメモ帳はさすがに使わないけど)があれば一応仕事ができます。

なんて地味な職種! たぶん憧れるゲーム職種最下位くらいですよ。

と、ここまで卑下してきたのは前フリであって、以降は盛大にふんぞり返ります。

ライターの真髄はな!! 小手先の技能じゃなくて!! 数千年の歴史をもつ数々の作文技術にあるんだよ!!
人類最古の職業なめんじゃねえぞ!!
※吟遊詩人は太古の昔から存在するストーリーテラーにしてライターだという観点。最古の職業はもっと色っぽい職業だという説もありますけどネ。

本格的に説明する前にライターの再定義を行なっておきましょう。
文章を書くと一概にいっても仕事は多岐にわたり、ケムコでは時によその会社じゃ無いような「物書き」の仕事をもらうことがあります。

・シナリオライター
まさにゲームクリエイターの一員である人。
老若男女さまざまなキャラクターのセリフや、彼ら彼女らが織りなす百花繚乱の物語は、みんなシナリオライターの頭の中から引っ張り出されたもの。 世界観やキャラ設定など、そのゲームのストーリーに関する情報を全て押さえている必要があり、立場的にプランナーに近いところもあるため、しばしばプランナーと兼任となる。 またシナリオ制作はゲーム制作でもかなり時間がかかる作業のため、行程管理をかねてディレクターも兼任することがある。その他も結構いろいろ並行でやらされる。

必要な能力: 妄想力

・コピーライター(セールスライター)
ゲームの販売文を作る。ゲームのパッケージや販売サイトにおけるキャッチコピー、要は殺し文句を設定することにより、ゲームをより魅力的に見せ、手に取ってもらう可能性を上げ、最終的には財布を開かせる、まさに言葉の魔術。 いかに短いワードで、いかに心にスッと入ってくるコピーを作れるか、それにはかなり独特な連想能力やセンスが必要になります。
うちでは、ゲーム内容を知っているだろうということでシナリオライターがやらされることも多い。

必要な能力: センス

・WEBライター(広報)
あなたが今見ているもの。WEBページやメールマガジンの文章などを書く人。WEBサイトなどの訪問者を楽しませつつ的確な情報を提供するためのものであり、回線越しにお客さんと和やかにコミュニケーションをとるような感覚が必要。 うちでは、WEBエンジニアがページつくるついでにやったり、なんか暇そうにしてたということでシナリオライターがやらされたりすることも多い。

必要な能力: コミュ力

・ユーザサポート
お客様に分かりやすい案内文や説明文を作るために、うちではライターが召集されることもある。たまに怒り狂うお客様に対して丁寧な謝罪文や交渉文を書く必要が出ることもある。

必要な能力: お客様目線、敬語知識

・公的文書の作成
誰かと一緒にビジネスをやるには業務契約が必要になる。お客様を集めてサービスを提供するには必ず利用者規約が必要になる。 「おいてめえウチのソフト違法アップロードしてんじゃねえよ」的な文章を送り付けなきゃいけないこともある。 最終版の作成には少なからずお堅い文章が必要になり、量もあってしんどいので、うちではライターにお呼びがかかることがある・・・むろん本職は法学部出てる人たちだけど。

必要な能力: 法律知識、独特な言い回し(~~ものとする、とか)

物書きには実はこんなにも種類があったのです。そして見ての通り、求められる能力はてんでんばらばらにもかかわらず、「文章書くの得意だろ」という言い分で、彼らは時に専門外の「物書き」を引き受けることもあります。
筆者の場合、文章書くのはキライじゃないのでいいんですが、セールステキストとかはガンガン長くなってしまうので、もっと適任者がいればなあと常々思っています。

では、いよいよシナリオライターの仕事を見ていきましょう。

文章を書くとはどういう「労働」か

物書きは、芸術的な行いとして妙に神聖視されることもあれば、誰でも書ける的な視点から妙に軽視されることもありますが、実際はれっきとした頭脳労働です。その内容を、ざっくりと説明してみましょう。

①情報の最適化

あらゆる文章は、望む情報を他人に伝達するために書かれます。
例えば以下の情報量があったとします。

【登場人物】
魔王ワロック、魔王の手下グルダシュ、戦士ミルズ
【地名】
戦士ミルズの故郷ワイルリート
【時間】
10年前
【起きたこと】
グルダシュがワイルリートを滅ぼしたことでミルズは魔王に対する復讐を誓う
 
これを意図的に乱雑に並べてみるとこうなりました。

魔王ワロックの部下はグルダシュで、そいつがワイルリートを滅ぼしたのが10年前で、ワイルリートが故郷の戦士ミルズが魔王に対して復讐を誓ったんだよ。

書いてみるとひどいものですが、実は人間は会話ではこの程度のいいかげんな文章を喋っています。 思って口に出すまでにそこまできれいな文章は出てこないのが普通ですし、イントネーションや区切り方で重要な情報を伝えることはできるからです。
しかし、文章を書く訓練を積んでいない人は、まさにこういった文章をそのまま書いてしまいます
どうするのが正解か。皆様は5W1H、つまり「いつ、だれが、どこで、なぜ、なにを、どうする」を明らかにして文章を作る、ということを多分国語の時間で習ったと思います。実はこれは最も単純な文章制作方法の一つです。
それに従って直してみましょう。

10年前、焼かれたワイルリート村で、故郷を失った戦士ミルズが、魔王の部下グルダシュに村を滅ぼされた恨みから、魔王ワロックへの復讐を誓った。

これが名文かというと疑問ですが、情報を過不足なく淡々と伝えることには成功していると思います。実際、とにかく内容を適切に伝えたい企画書などではこういった文が適しています。
ただ、こんなレベルの文章しか作れないライターは腹を切って死ぬべきです。

②修辞

さっきの情報が「戦士ミルズの冒険」という作品の冒頭だとすれば、読者に本当に伝えるべきは「起きたこと全て」ではありません。 魔王の恐ろしさやその部下の残虐さ、戦士の恨みと復讐の高潔さを強調し、ここから始まる冒険譚へと読者の心を引きよせなければならないのです。
そのために何が必要か。全ての情報を均等に伝えるのではダメです。重要な情報を優先的に強調して伝え、読者の心を揺さぶる――名文が必要です。

十年の歳月のむこう、灰と業炎のかなた。 あの日の絶望を、悲嘆を、憤怒を、戦士ミルズはいまだ胸に秘めている。 父を、母を、そして故郷ワイルリートを焼く魔性の炎。 それに照らされし、魔王ワロックの尖兵、グルダシュの部隊の旗印。 『神罰など待てぬ。我こそ魔王にとっての災厄とならん』 彼はいまだ胸に秘めている。 焦熱の中で誓った、魔王への復讐の想いを。

かっこいい(自画自賛)。
多少文章が伸びていますが、多少セリフとかを勝手に加えていますが、 既に過去が彼の中で風化しつつあること彼が憎しみを抱く直接のシンボルが敵の旗印であること彼の復讐感情がどんなものなのかや、主人公はどういうタイプの復讐者なのか・・・ そういった点を合わせて戦士のかっこよさという情報の最適化を優先して調整しました。 そのために「体言止め」「対句法」などの技法を使っています。こういった文章をきらびやかに彩る様々な技法を「修辞法(レトリック)」と呼びます。

良いライターは大量の読書経験をもち、数々の名文について知識があり、それらを適切に運用して名文をつくることに長けています。また沢山の語彙(ボキャブラリー)を持っているため (例えば「火」を表す表現が重ならないように「業炎」「魔性の炎」「焦熱」などを使い分けるなど)、常に新鮮な読み口を作りだすことができます。

実は筆者はそういった方面にはあまり強くないのですが、ライターとして大量の文章を吐き出してきた体験からそれなりに格好のつくレトリックをいくつかストックしていますし、 類義語辞典なども最近は充実していますので、それを使ってなんとかやっています。
もちろん、この部分が戦士のかっこよさではなく魔王の残虐さを伝えるのを優先すべきだと判断できる場合はそのように書きます。おそらく略奪の様子や犠牲者の悲惨な描写、そしてグルダシュ本人の極悪な表情などを絡めるでしょう。
そういった「ここで何を伝えるべきか」を判断し「それにはどう表現すべきか」を言われなくても気遣えるのがライターの基本技能です。
ほらそろそろ「俺でも書ける派」のアナタも自信がなくなってきたでしょう。謝るなら今ですよ。

③作劇

シナリオライターは物語を書きます。この点が最も一般人から「?」なところでしょう。空想を文字に起こす作業。 そう書くとあたかもライターたちが妄想ばかりしている危険人物であるかのようだ!
また、しばしば放言される言葉が「シナリオなんてヒロインを殺しとけばOK」です。ケムコ社内ですらよく聞きます。 それは「泣かせる」には安易かつ有用な方法ですが、万能なわけないだろ!!
こういう「○○しとけば物語になるでしょ」という物言いがまかり通るからコモディティ化を極めるドラマや商業映画はどんどんつまらなくなりライターの給料は下がる一方なんですよ! ああすべてがライターから搾取しようとする陰謀に見えてきた!!
実際は、物語を作成するにあたりシナリオライターが行う作業は、前回紹介したプログラムに近い、冷たい論理に基づいた設計作業に他なりません。

設計のために、ライターはプロットというものをつくります。 これは「あらすじ」のもっと細かいもので、シーンごとに分けて書かれた詳細かつ膨大な資料です。 プロットを作る最大の利点は、そのシーンでどんな情報を提示し、それにより読者の感情をどう操作するか、そういった計画を立てられるところです。

ここで一発ぶちあげておきますが物語とは読者を感動させるプログラムです。 一般的に「感動=泣かせる」みたいな言われ方がされますが、感動にも色々あります。怒り、悲しみ、憎しみ、絶望、喜び、安らぎ、興奮・・・とにかく心を動かせればそれは感動です。 もちろん、それは演説やリアルドキュメンタリーでも人を感動させることができますが、そういったものにも全て「物語」は存在しています

例えば、弱者が強者を打ち倒す物語は一般庶民に爽快感を与え、大事な者を失う物語は多くの人々に危機感や喪失感、そしてそれを防がなければという思いを与えます。 それがフィクションかノンフィクションかだけの違いです。人間の脳は物事を効率的に理解するためにストーリーを必要としますが、 そのストーリーによっては感情を引っ張られる、というような仕組みになっているのです(多分)。 他にも例えば桃太郎の昔から存在する「主人公が特殊な生まれ方をする」というくだりは「生まれからして特殊なのだからきっと超人に違いない」という期待感 (及び多少のチート性能やシナリオ上のえこひいきはまあ許してやろうという気)を生み出し、 「3人の仲間を得る」というくだりは「こんなに多彩な仲間に認められるほどきびだんご主人公は凄いやつだ」と読者に暗に理解させ主人公の株を上げます。 このようにシーン単位、文章単位での感動のギミックが存在し、それを組み合わせたのが物語だということになります。

あとは、前回のプログラマーのことも思い出しながら理解してください。 物語のプログラマーであるシナリオライターは、 章やシーンや言い回しひとつひとつがどのような感情の励起につながるかを熟知し、それを全て駆使して、読者の感動をはるか高みへと持っていくプログラムを作るのです。
ほら!! 凄そうでしょう!! 凄いんですよ実際!! 人類最古の(略

④設定

ここまでは物語そのものに関して述べてきましたが、実際は話の筋だけでは作品にはなりません。実際に作品に出てこなくても、物語にはたくさんの設定が存在します。
人物設定、世界設定、都市設定、歴史設定、魔法とは何か、善悪とは何か、この世界における一番の目玉は何か・・・そういったものをきっちりと設計しておくこともシナリオライターのお仕事です。
なぜ必要なのか? いくら個々のシーンの目的が決まっていても、シーンは結局キャラクターや舞台装置が動くことで紡がれるのです。

では彼らがなぜそういう言動をし、それによって相手が、ひいては世界全体がなぜこうリアクションするかといった点は、緻密かつ合理的な設定があるかないかに強く依存します。 逆を返せば、設定を充実させてキャラクター像や舞台像をしっかり自分の中で作っておけば、まるでそれらが勝手に動いているかのような感覚でなめらかに作劇を勧められます。 だからライターは、下手をすれば本文よりも膨大な量の設定を作成するのです。

ライターが注意すべき3種類の「シラケ」

ライターの苦悩についても書いておきましょう。
芸人にとって最も恐ろしいことが「スベる」ことなら、シナリオライターにとって最も恐ろしいことが「シラケる」ことです。自分の物語に興味を持ってもらえない。 あるいは、一度興味をもたれた世界を見離される。それは自分の努力の否定でもありますし、「もうこいつはこんな話しか書けないのか」とか書かれた日には即座にキャリアの危機です。 みんなー! いまはもうみんなのレビューがクリエイターを殺す時代だよー!! 言動に責任はもとうねー!!
経験から、世の中には3種類の「シラケ」があります。これを避ける、あるいは初めから避けるような作文を心がけるべきだと思っています。

①情的シラケ

A:「出会ったのは入学時ですがクラスが別なので本格的に恋に落ちるのは1年後です」
B:「だったら『そして1年が経った』でさっさと先行けや!! なにご丁寧に何にも起きない日常シーンを週刻みで書いてんだ!! 秋までにヒロイン登場1度きりとか斬新だな!! いつキスすんだよこの2人はよ!!」

さっきから言っているように物語は感動させる装置であり、読者は感動したくて物語を読みます。感動が得られなければ当然シラケます。
いくら書き手のこだわりでも、感動ポイントがずっと先にしかない、あるいは感動するために多くの読み解きや設定理解が必要という作品は設計段階で問題があると言わざるを得ません。 いくら書き手がそう言い訳しても、読んでもらなければおしまいなのですから。
もっと感動ポイントをばらまいて読み進めさせながらクライマックスに導くような構造を、最初から心がける必要があります。

②知的シラケ

A:「なんとテロリストは連合国の生命線である巨大輸送ケーブルを用いて兵器を輸送していたんですよ!!」
B:「・・・え、生命線なのにX線検査もしてなかったの」
A:「え、いや、だいたいそんなイイ加減なもんじゃないですか」
B:「いい加減なのはキサマだ。飛行機も乗ったことないのかボケナス」

好きな人のことはもっと知りたくなる。物語だって同じです。読者は物語に興味を持った場合、その世界や設定のことをもっと知り、理解し、覚えたいと思うようになります。 その時に実は知るべきことがあまりない=設定の底が浅いことがバレたり、細かい矛盾や非合理だらけ=設定のいい加減さがバレたり、 どっかで見たものばかり=設定のオリジナリティのなさがバレたりすると、知的好奇心は即刻失われます。ここも設定をしっかり作っておくべき理由です。

③地雷的シラケ

A:「なんでジェラルディー様を殺したんですか」
B:「なんでジェラルディー様を殺したんですか」
C:「なんでジェラルディー様を殺したんですか」
D:「・・・次のシリーズで実は生きてたことにするんで許して下さい・・・」

一番手強いシラケです。
読者にはそれぞれ読書上のこだわりや、こういうのが読みたい、こういうのは読みたくないといったこだわりがあります。 中でもこういうのは絶対読みたくないという地雷を持っている人は多々いて、 それに触れた瞬間他がどれだけ良くても大爆死、0点扱いにされてしまいます。書き手としてはとても辛いうえに理不尽な事態です。
最も良くある地雷は、ハッピーエンドでないことと、お気に入りのキャラクターが死ぬことです。ハッピーエンド以外認めないという読者さんは結構います。 キャラの死については、書き手側が十分に退場シーンを彩ったとしても、キャラが死ぬこと自体許してくれないもありますし、彩り方がイメージと違った(耽美OK、泥臭いのNGなど)ということもあります。
細かい地雷を避ける手はほぼないのですが、せめてジャンル的な地雷は踏まないように気をつけたいものです。 RPGで仲間が永久離脱とか。推理もので真相が超能力者の犯行とか。
そのジャンルの読者の9割が地雷認定している地雷を踏むのは、ライターの理解不足と言われても仕方ないでしょう。

実際の仕事

最後に筆者が味わった(そして今現在も味わっている)ライターの実際について軽く触れておきます。
まずは原案を出し(溜めておいたのを出す)、同僚と検討して良いものを選びます。
次にプロットを立て(これだけで1~2ヶ月はかかることも)、同僚と検討して悪い部分を直します。
最後にシナリオテキストを書きます(何カ月もかかります)・・・進捗報告もかねて同僚に見せ、ダメな部分はさかのぼって早めに直します・・・ 書きあげた時にやっぱ問題だと思ったら大きく書きなおすこともあります・・・とはいっても修正量にも限界があるから、 今あるテキストと修正部分がうまくつながるように考えます・・・悩みます・・・なんとか考え付いたらほっとします・・・
その後ゲーム的な演出を入れる作業(スクリプト)に携わることもあります・・・もう山は越えているとはいえ・・・1か月とかかかりますし・・・ 人にやってもらう場合は・・・どの表情をつけるかひとつで議論になることも・・・

気が付くと今日も鶏を縛っています

基本的には「書く」「悩む」「書く」「ダメ出しを受ける」「悩む」「書く」の繰り返しです。 最終的に書く文の量は原稿用紙数百枚、数千枚という単位になります。文庫本にして何冊分というような量です。もはや手には物理的ダメージが蓄積され、キーボード選びにうるさくなる一方です。

それでも、自分の文章で人を魅了するという魔性のよろこびを知ってしまったら、もう戻れません。
そうして今日も、無名のライター達は、無数のテキストを吐き出すのです。いつか一流ライターとして成功するため。それにより、さらに多くの人に作品を読んでもらうために。

今回のまとめ

  • ライターは「物書き」の質の評価が難しいため格差ができやすい
  • シナリオライターは物語というプログラムにより読者を感動させる
  • ライターはシラケさせないように全力を尽くす
  • 一週間塩と月桂樹とタマネギにつけたのち塩抜きしてスモークして保温調理で火を通した丸鶏スモークチキンは絶品である
次回、グラフィッカーについて。この呼称も会社によってまちまちなためとりあえず絵を描く人ということで書きたいと思います。 筆者もなりたかったなあ、グラフィッカー。しかしながら現在とても深刻な問題を抱えている業種でもあります。 果たして筆者はゲーム業界の闇に斬り込めるのか!? 次回をお楽しみに。

※それでも俺には話が書けると仰る方はkeitai-info@kemco.jp へ作品をご送付下さい。

【05回 了】



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