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文化・エンタメ

芥川賞に古川さん「背高泡立草」 直木賞に川越さん「熱源」

第162回芥川賞と直木賞の選考会が東京で開かれ、芥川賞は古川真人さんの「背高泡立草」、直木賞は川越宗一さんの「熱源」が、それぞれ選ばれました。(1月15日 20:37)

第162回芥川賞と直木賞の選考会は、15日夕方から東京 中央区の料亭で開かれました。

【芥川賞受賞の古川真人さん】芥川賞の受賞が決まった古川真人さんは、福岡市出身で横浜市在住の31歳。
高校時代に所属していた文芸サークルで小説を書き始め、大学を中退してからは兄の家に同居して創作活動を続け、文芸雑誌の新人賞などに作品の投稿を続けてきました。


平成28年に発表したデビュー作の「縫わんばならん」が芥川賞の候補作となり、今回は4回目の候補での受賞となりました。

【芥川賞受賞作「背高泡立草」】受賞作の「背高泡立草」(せいたかあわだちそう)は、20代の女性が母親や親戚とともに長崎県の島にある母方の実家に向かう場面から物語が始まります。
誰も使わなくなった納屋の草刈りなどをする様子を方言を交えて描く中に、戦前や江戸時代を舞台にした別の物語が挿入され、島や家をめぐる歴史や記憶がひもとかれていきます。

【古川さん「いざ賞を取ってみるとあわあわしている」】芥川賞に選ばれた古川真人さんは、記者会見で「いざ賞を取ってみると、『マジかよ』というか、『困ったな』というか、あわあわしているというのが正直なところです」と今の気持ちを明かしました。


受賞について聞かれると、「今のところ、うれしいという気持ちはしみじみと味わえていないが、自分が候補になるたびに喜んでくれている人がいて、そういう人たちが今、喜んでくれているんだろうなと思うと、やっぱりこれはうれしいことなんだろうなと思っています」と話していました。


また、九州の方言で表現していることについては「方言が得意だからというよりも、自分にとっていちばんすらすらと出てくるもの、出てくることばにつられて、考えとかその人の動作が出てくる。
そのことばが島のことば、福岡のことばでした」と説明しました。


今後については、「これまで島のことだけを繰り返し繰り返し書いてきた。
あまりそれを続けると、今まで触れてこなかったものを無視して自分が書きやすいものを書いてしまうと思うので、島から出てみたい。
今後書くとしたら、自分にとって不慣れなもの、未知の他者が現れるものにしようと思っています」と抱負を述べていました。

【芥川賞選評「これまでの作品と毛色の違う作風」】芥川賞の選考委員の1人、島田雅彦さんは今回の選考について、「もしかしたら受賞作なしになるのではないかという気配が漂い、大変重苦しい雰囲気の中で、活発な議論がなされた。
最終投票で古川さんがちょうど半数になり、三角をつけた1人から『丸にする』という鶴の一声があった。
最悪の事態を免れたことは喜ばしいかぎりだ」と説明しました。


また、古川さんの作品について「草刈りという誰もやりたがらない退屈な作業の中に若者を参加させることで、多少読みやすくなった」としたうえで、「土地に根づいた歴史の重層性を巧みにすくい上げ、単調な草刈り作業の合間に時空を越えたエピソードを織り込んでいて、これまでの作品と毛色の違う作風となっている」と評価していました。

【直木賞受賞の川越宗一さん】一方、直木賞の受賞が決まった川越宗一さんは、大阪市出身の41歳。
大学を中退後、カタログ通販会社に勤め、仕事のかたわら30代半ばから小説を書き始めて、おととし「天地に燦たり」で松本清張賞を受賞してデビューしました。


直木賞は今回、初めての候補での受賞となりました。

【直木賞受賞作「熱源」】受賞作の「熱源」は、明治時代から第2次世界大戦にかけての樺太、今のサハリンを舞台に、日本の同化政策によって故郷を追われたアイヌの男性と、囚人として送られてきたポーランド人の民族学者が、戦争に巻き込まれながらも自分が守るべきものを模索しながら力強く生き抜く姿を史実を踏まえて描いた作品です。


みずからのアイデンティティーを脅かされる苦悩や憤りなどが丁寧に描かれ、現代にもつながるマイノリティーの問題とどう向き合うかを読者に問いかけています。

【川越さん「感謝と尊敬の気持ちでいっぱい」】直木賞に選ばれた川越宗一さんは、記者会見で受賞が決まった心境について「現実感がなく信じられない気持ちで、ドッキリが進行しているようなハラハラした気持ちです」と振り返ったうえで、「小説の時代を生きた人たちに感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです」と話しました。


また、アイヌを題材とした作品で受賞したことについては、「世間に知られていないことが世に広がるきっかけとなったことは作家として光栄に思う」と話していました。


また、デビューから2作目で直木賞を受賞したことについて「自分がどれだけできるか分からないが、自分の力を信じて期待に応えられるような作家活動をしたい」としたうえで「歴史を通して僕たちが生きる現代を書きたいと思っています。


僕たちが、今どういうふうに生きていて、これからどう生きるのかを書きたい」と今後の抱負を語りました。

【北海道アイヌ協会「アイヌに関心をもってもらうきっかけに」】アイヌ民族を取り上げた小説、「熱源」が直木賞を受賞したことについて、北海道アイヌ協会の加藤忠 理事長は「まだ本は読んでいないが、共生社会の未来に向けた明るい話題だと思う。
小説を通して多くの人にアイヌに関心を持ってもらい、さまざまな民族がいるということを考えるきっかけにしてくれれば」と話していました。

【直木賞選評「近年まれに見る大きなスケールの小説」】直木賞の選考委員の1人、浅田次郎さんは賞の選考過程について、「混戦が予想されたが、1回目の投票で川越さんが一歩抜きん出る形となり、4つの作品による2回目の投票で相当な点数を獲得した」と説明しました。


また、川越さんの作品を選んだ理由について「近年まれに見る大きなスケールで小説世界を築き上げ、登場する人物も生き生きと魅力的に描かれている。
難しい資料を駆使して、大きな小説を書いた」と説明しました。


そのうえで、アイヌ民族を取り上げたことに触れ、「少数民族としての苦悩や絶望がどこまで書かれているかという問題だが、さほど小説を脅かしていないと判断した。
苦悩や絶望の描き方がいいあんばいだったと思う」と評価していました。

(1月15日 20:37)


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