2017年9月、安倍総理は「第1回人生100年時代構想会議」を開催しました。現在の日本人の平均年齢は、男性が80.98歳、女性が87.14歳。100歳の人口は6.5万人を超え、2015年には、100歳になった国民に国から送られる銀杯が、100歳の人口が増えたためにメッキ処理に変わったということがニュースにもなっています。
現在の70代は昔の60代といわれ、そうした元気な高齢者の人口が増える時代、「定年制の廃止」がうたわれるようになりました。現在、政府は、2019年度から60歳の定年制度を65歳に伸ばす方針で調整を進めています。しかし、定年制の年齢延長だけでなく、「定年制廃止」という議題が持ち...
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2017年9月、安倍総理は「第1回人生100年時代構想会議」を開催しました。現在の日本人の平均年齢は、男性が80.98歳、女性が87.14歳。100歳の人口は6.5万人を超え、2015年には、100歳になった国民に国から送られる銀杯が、100歳の人口が増えたためにメッキ処理に変わったということがニュースにもなっています。
現在の70代は昔の60代といわれ、そうした元気な高齢者の人口が増える時代、「定年制の廃止」がうたわれるようになりました。現在、政府は、2019年度から60歳の定年制度を65歳に伸ばす方針で調整を進めています。しかし、定年制の年齢延長だけでなく、「定年制廃止」という議題が持ち上がっています。今回はこの「定年制廃止」のメリットとデメリットについて解説します。
●なぜ定年制廃止が必要?
「人間五十年、 下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」というのは、「敦盛」という舞に出てくる一節です。戦国武将・織田信長が好んで舞ったことで有名ですが、400年で日本人の寿命の感覚は2倍に延びました。「人間100年」と考えた時、みなさんはあとどれくらいの年月を過ごすことになりますか。
現役世代であれば、あと50年、60年……新社会人であれば80年近い歳月が、この先待っていることになります。しかし、「生きていく」ということは、人間の社会システム上、そう簡単なことではありません。衣食住を揃えるには、「お金」の力が必要になるからです。
そのために年金システムや、保険などが発達してきたわけですが、寿命が延び、人口の割合が変動すれば、こうした社会のシステムも変わっていかなくてはなりません。そこで持ち上がっているのが「定年制廃止」なのです。
●定年制廃止のメリット
まずは定年制を廃止した際のメリットをあげていきましょう。まず企業側のメリットですが、以下のようなことでしょう。
・習得してきた知識・技能・経験を持った社員を手放さずにすむ
・人材育成費用を削減できる
・スキルやノウハウの継承がスムーズになる
一方、労働者側のメリットとしては以下を挙げることができます。
・働き続けたい意欲を満たすことができる
・年金生活が困窮することを避けられる
・キャリアプランを多様に考えられるようになる
2017年、有効求人倍率は1.6倍と上昇を続けており、人手不足が否めません。しかし、団塊世代が定年を迎え、対して若い世代の人口は減り続けています。転職には有利な環境が整っていることになりますが、人手不足が続けば経済にマイナスの影響が出てしまいます。
定年を迎えた世代でも、「まだまだ働ける」「社会と関わっていたい」と考えている人も多くいます。人手不足を、高齢者の就業で補うことができれば、企業側にとっては心強い力となり、労働者側にとっても「仕事」という居場所を得ることができるのです。
●定年制廃止のデメリット
対して、デメリットとしてあげられるのは次のような点です。
・高齢者を雇用し続けることで、若者の就職(雇用)がおびやかされる
・人件費が増大し、会社の経営が圧迫される
・雇用する人材を選べない
定年世代には確かに多くの知識や経験がありますが、実際にこれから会社を引っ張っていくのは30代、40代の若い世代が中心になります。日本では年功序列の風習が強く、年齢があがればあがるほど、賃金を多く支払わなくてはいけません。しかし、定年を廃止しいつまでも賃金を上げ続けることは現実的ではないでしょう。お金は無限ではありませんから、会社の血肉となり活躍する若い世代に、薄給を強いることにつながります。
また、定年制を廃止することで、会社の新陳代謝が悪くなるともいわれます。全員が全員、いつまでも健康でバリバリ働けるというわけではありません。しかし、会社は社員が現役続投を希望するなら受け入れなくてはならなくなります。在籍はしているけれど、仕事がこなせないようでは、定年制を廃止する意味はないでしょう。適切な賃金の支払いと、客観的な人事評価は必要不可欠といえます。
●人生100年を意識した人生設計が求められる時代に
人類の歴史上、これほど平均寿命がのびたことはありません。既存のシステムと、新しいシステムを組み合わせ、現役世代と引退世代、企業と労働者のベストな距離感をつくりださなければなりません。
また、働き方の多様化も進み、会社に在籍するだけが仕事ではなくなっています。定年制が廃止されれば、いつ働き、いつ辞めるか、個人にその裁量が任されることになるでしょう。「人生100年」を念頭に置きながら、それぞれの個人が将来の設計をしていかなくてはいけない時代が、やってくるのかもしれません。
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