2018年3月21日、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、29年ぶりに自社生産レコードを発売しました。数年前から海外で端を発したアナログレコードブームが日本にもやってきているようです。
滅びかけたレコードが今また脚光を浴びているのは、なぜなのでしょうか?
●若者が牽引するレコードブーム
2009年に底打ちしたレコードの生産枚数は、2016年には約5倍の79万9000枚に達するほど、急スピードで成長しています。
懐かしいレコードの音をもう一度楽しみたい、という40~50代がレコードを買っているという面もありますが、このブームを後押ししているのは意外にも20~30代の若者たち。20...
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2018年3月21日、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、29年ぶりに自社生産レコードを発売しました。数年前から海外で端を発したアナログレコードブームが日本にもやってきているようです。
滅びかけたレコードが今また脚光を浴びているのは、なぜなのでしょうか?
●若者が牽引するレコードブーム
2009年に底打ちしたレコードの生産枚数は、2016年には約5倍の79万9000枚に達するほど、急スピードで成長しています。
懐かしいレコードの音をもう一度楽しみたい、という40~50代がレコードを買っているという面もありますが、このブームを後押ししているのは意外にも20~30代の若者たち。2017年4月に渋谷で行われたレコードの祭典「レコード・ストア・デイ」には、約200人もの若者がつめかけたといいます。
日本のCDショップもこうしたレコードブームの再燃を受けてレコード専用のブースを設けたり、専門店を出店するなどして、レコードのシェア拡大のため奔走しています。
●「所有する」価値が若者を惹きつける
若者がレコードに惹かれる理由は大きく分けて2つ。アジアンカンフージェネレーションやサチモスといった、若者に人気のアーティストが続々とレコード盤を発売しているため。そしてレコードに触れて楽しみ、収集するというアナログならではの魅力に、若者たちが価値を見いだしているためだと考えられています。
SMEの水野道訓社長は日本経済新聞に「ストリーミング(逐次再生)で聞いて気に入った曲を買う若者が多く、『好きな曲は所有したい』という欲求につながっている」とコメントを寄せています。
大きくて厚みがあるレコードは、それだけでインパクト大。さらに音を再生するために一手間かけるという労力も、デジタルに慣れた今の若い世代には物珍しいのでしょう。手元に置くお気に入りの一枚に、愛着がわいてくるのかもしれませんね。
●ブームで終わってしまうのか
しかしこのレコードブームはいつまで続くのでしょうか。音楽ファンやレコードショップ店員の間では、「ブームによって古くて良いレコードの希少性が高まって値上がりし、手に入りにくくなる」「ブームが終わった途端、値崩れする可能性もある」などと、その行く末について懸念する声が聞かれます。中には「結局ファッションとして触れている人が多いのでは」(日本経済新聞)という指摘も。
TwitterやインスタといったSNSで、手に入れたレコードやプレイヤーをアップする様子も見て取れることから、高価で稀少なレコードを見せたい、「いいね」がほしいという、自己承認欲求を満たすものと考えている人もいそうです。
10万円以上するレコード機材は珍しくなく、レコードを聞く環境を整えるだけでも決して安いとはいえない買い物です。大枚をはたいて音楽を聴く余裕のある若者が、この先増えてくるのかは未知数。またレコードブームの火付け役だった海外ではビートルズなど往年のスターたちの名盤が人気を集め、日本でも店頭に並ぶのは洋楽の復刻版が中心です。新譜も発売されていますが、まだまだ一般への認知度に欠けていると言わざるをえないでしょう。
ブームがブームに終わらないためには、レコードならではの魅力をより広く深く認知させていくこと、そして名曲の復刻だけに終わらず、レコードでしかできない“新しい楽しみ方”を提供することが、今後のシェア拡大のカギとなりそうです。
●多様化の時代だからこそレコードを再評価できるようになってきている!?
生産枚数だけでいえばCDに比べるとまだまだ及ばないものの、レコードの独特の音やジャケットは他にはない、味わい深いもの。音楽を楽しむ環境が多様化しているこの時代だからこそ、レコードを今一度再評価できるようになってきているのかもしれませんね。
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