日本にも、銀行に入れっぱなしのお金が減っていく時代、つまり銀行口座を持っているだけだと「口座維持手数料」がかかるようになる時代が到来するかもしれない――と話題になっています。
「口座維持手数料」とは、「預金口座の管理を理由に銀行が預金者から徴収する手数料」を指します。
すべての口座を対象とする「口座維持手数料」と、入出金などで稼働していない口座に対象を絞った「口座管理手数料」に区別することがあり、2019年末に「近未来に日本にも導入されるかもしれない!?」と話題になっているのは、主に後者の「口座管理手数料」です。
実際に、2019年12月5付の『日本経済新聞』では、三菱UFJ銀行が2年間取引...
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日本にも、銀行に入れっぱなしのお金が減っていく時代、つまり銀行口座を持っているだけだと「口座維持手数料」がかかるようになる時代が到来するかもしれない――と話題になっています。
「口座維持手数料」とは、「預金口座の管理を理由に銀行が預金者から徴収する手数料」を指します。
すべての口座を対象とする「口座維持手数料」と、入出金などで稼働していない口座に対象を絞った「口座管理手数料」に区別することがあり、2019年末に「近未来に日本にも導入されるかもしれない!?」と話題になっているのは、主に後者の「口座管理手数料」です。
実際に、2019年12月5付の『日本経済新聞』では、三菱UFJ銀行が2年間取引がない不稼働口座に手数料をかける動きを示しており、具体的には2020年10月には年1200円の「口座管理手数料」を導入する計画の検討に入っている旨を取り上げています。
●「口座維持手数料」導入検討の背景
ではどうして、「口座維持手数料」の話題となり、大手から地方銀行まで全国の各銀行で積極的に導入が検討されるようになったのでしょうか。
背景には、銀行が「利ざや」(取引で売値と買値の差額によって生じる利益金)で稼げなくなっている現実があります。東京商工リサーチのまとめによると、銀行の稼ぐ力を示す「総資金利ざや」(融資や資金運用の利回りから、預金など資金調達にかかる金利などを差し引いたもの)は年々低下しています。
しかし、銀行側は1口座あたり毎年200円の印紙税を負担しているほか、印刷代や口座管理のシステムや人件費など経費は生じています。そのうえ、近年ますます高度化するマネーロンダリング(資金洗浄)のチェックや対策なども含め、以前に比べて口座管理に要するコスト自体が上がっています。
金融機関の経営に詳しいコンサルティング会社マリブジャパンの高橋克英氏は『週刊朝日』誌上で、「銀行の収益力は落ちています。どこも早く導入したいでしょうが、顧客の反発が予想されます。三菱UFJや三井住友、みずほなど、まずメインプレーヤーが始めるのではないでしょうか」と述べています。
●「口座維持手数料」の実質的な例
それでは実際に「口座維持手数料」が導入された場合、どのようにお金は減っていくのでしょうか。
「口座維持手数料」と実質的に同様な例として、りそなホールディングス傘下のりそな銀行と埼玉りそな銀行が2004年より徴収している、「未利用口座管理手数料」の概要を以下に挙げます。
「未利用口座管理手数料」運用の流れ(りそな銀行・埼玉りそな銀行)
1)預金残高が1万円未満で入出金が2年以上ない場合、規定による対象外の口座は「未利用口座」と認定される。
2)「未利用口座」と認定された口座は、「未利用口座管理手数料」として1320円(税込)が年1回引き落とされる。
3)残高が手数料に足りなくなると自動的に口座が解約される。
※例えば残高が5千円の口座では、計算上4年目で残金がなくなる。
なお対策として、「未利用口座管理手数料の対象となった口座をお持ちのお客さまへ、事前に文書にて、お届けのご住所に“ご案内”を差し上げます」としていますが、引っ越しなどで“ご案内”が届かなかった場合も「通常到達すべき時に到達したものとみなします」と述べ、手数料の返却や解約した口座の再利用には応じられないともしています。
●個々人に求められるお金のリテラシー
他方、「口座維持手数料」の導入だけでなく、同店舗内のキャッシュカードでの振り込みの有料化や店舗窓口での振込手数料の値上げなど、これまで無料や低価格で行われていたサービスの有料化や値上がりなども進んでいます。
『週刊朝日』では、預金口座が複数ある場合はできるだけまとめておくこと、一つの預金口座に決済や引き落としなどをできるだけ集約すること、休眠口座を減らすこと、窓口での振り込みを減らすことなどを推奨していますが、同時に高額の現金を自宅に置くことの危険性も述べ、「少しぐらいの手数料がかかっても、銀行に預けたほうが安心なこともある」としています。ただし「キャッシュレス決済なども活用して、不要な現金は減らそう」とも呼びかけています。
銀行に入れっぱなしのお金は、生かされないどころか額面すら減ってしまう時代に突入する可能性が、いよいよ高くなってきました。正しく適切な銀行との付き合い方やお金のリテラシーが、今後はよりいっそう個々人に求められてくるように思われます。
<参考文献・参考サイト>
・「不稼働口座に手数料 三菱UFJ銀行、20年秋にも年1200円」『日本経済新聞』(電子版、2019年12月5日付)
・「口座管理手数料とは コスト上昇、預金者に負担転嫁」『日本経済新聞』(2019年12月6日付)
・「銀行が消える! シニアのお金の守り方」『週刊朝日』(2019年12月6日号、朝日新聞出版)
・普通預金口座の未利用口座管理手数料について - りそな銀行
https://www.resonabank.co.jp/kojin/hiraku/hutsu/miriyou.html
・普通預金口座の未利用口座管理手数料について - 埼玉りそな銀行
https://www.saitamaresona.co.jp/kojin/hiraku/hutsu/miriyou.html
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