自民党総裁選のしくみと歴史

辻 雅之
(記事掲載日/2007.09.18)

自民党総裁選は、どのように行われるのでしょうか。また、今まではどのように行われ、結果はどうだったのでしょうか。日本のリーダーを決める自民党総裁選についてお話していきます。

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1ページ目 【総裁選挙についてのルールは2つある!】
2ページ目 【1970年代までの自民党総裁選の様子】
3ページ目 【現代の総裁選のしくみができあがるまで】

基本的には一般党員も選挙権を持つ

通常総裁選のしくみ
任期満了時など、通常の総裁選のしくみ。党員にも選挙権がある。
自民党には党則がありますが、総裁選の実施については別途「総裁公選規定」というものがあります。

これによると、「本党の総裁は、本規程の定めるところに従い、党所属国会議員、党員、自由国民会議会員及び国民政治協会会員の投票によって公選する。」(第1条)とあります。

自由国民会議とは自民党を支援する個人のみからなる団体で、この会員がよくいう「党友」のことです。国民政治協会は自民党の資金管理団体で、会員から寄付を受け付けているところです。

このように、普通の場合、総裁選は総裁の任期満了1ヶ月前までに総務会が日程などを決定し、党員・党友たちが投票し(ただし前2年の党費を納めていることが必要)、それが地方票として反映されることになっています。

党員・党友たちの投票は、各都道府県支部で開票され、ドント式で都道府県の持ち票に比例配分されます。50%得票した候補には、その都道府県の持ち票の半数があてられるわけです。

この都道府県の持ち票は合計300あり、うち159を所属する党員数に基づいて各都道府県に比例配分し、それに一律3票を追加して決定されます。

この地方票と、国会議員票の合計で、総裁が決定するのです。……ただし、これはあくまで通常の場合です。

緊急の場合はどうする?

緊急総裁選のしくみ
緊急時の総裁選のしくみ。地方票の取扱いは各都道府県連に任されてしまう。
安倍首相が任期途中でいきなり辞めてしまい、早く後継総裁を決めなければならない……というときはどうするのでしょう。

余裕があるときは通常の手続で総裁選を行いますが、緊急とみなされた場合は、党則の第6条が適用されます。

つまり、両院議員総会に都道府県支部の代表3名が集まり、国会議員票+地方代表票(3名なので持ち票は各都道府県一律3票)によって総裁を速やかに決定することが定められています。

安倍首相の後継については、国会会期の途中、というか始まったところだったので、緊急を要するということもあり(また、安倍首相の要請もあり)、この「党則第6条総裁選」が行われることになったのです。

総裁選挙のいまむかし

このような制度は、小泉政権のもと、しっかり決められるようになったものです。かつて、国会議員だけで決めていたときは、しばしば「密室での談合」や「天の声」などによって、後継総裁が決まっていたこともありました。

これについては、後でお話しましょう。

そしてとにかく総裁選は、かつてはカネがかかるものでした。カネがかかるといっても、通常の選挙費用ではありません。国会議員たちに現金をそのまま渡していたのです。これを「実弾戦」と呼んでいました。

さらに、2つの派閥からお金をもらう「ニッカ」、3つからなら「サントリー」などという言葉も飛び出す始末でした。しかし公職選挙法の範囲外なので、おかまいなしだったわけです。

しかし、政治資金規制法の相次ぐ改正などでそんなことはできなくなりましたし、55年体制が崩壊し、自民党も談合や実弾戦だけで総裁を選ぶ時代ではなくなりました。それを象徴していたのが「地方の反乱」といわれた小泉総裁誕生の瞬間だったわけです。

では、そんな総裁選のいま、むかしについて、いままで行われてきた自民党総裁選を振り返りながらお話していきましょう。

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