事実婚から考える「結婚の意味」とは

島田 佳奈
島田 佳奈

ガイドの経験から、事実婚のメリット・デメリットを考察

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事実婚は結婚としての選択肢のひとつです。理由なくただ入籍しないだけの関係ならば、恋人同士の同棲と変わりありません。

「事実婚」というスタイルを選択するカップルも増えてきましたが、理解を示す人は多くないのが現状です。そもそも事実婚とは、婚姻届を提出しないカップルが「社会慣習上において婚姻とみられる事実関係」にある状態を指します。

事実婚とは社会慣習上において婚姻とみられる事実関係をいい、婚姻成立方式の分類上においては、事実婚は無式婚とも呼ばれ婚姻に一定の儀式を要求する要式婚(形式婚)に対する概念とされる(婚姻要件としての事実婚)。

出典 : 事実婚 Wikipedia
世界レベルで見れば、事実婚は決して特殊なものではありません。しかし、日本においては、まだまだ事実婚に対する法的な体制や世間一般の認識が(法律婚に比べて)良くないせいか、よほどの事情がない限り婚姻届を提出する「法律婚(入籍婚)」が一般的です。事実婚を選択する事由は、当事者でなければなかなか想像がつきにくいかもしれません。

筆者が知っているケースでは、
・夫婦別姓を希望したため
・子供(連れ子)に関する問題(養子縁組、氏名の変更など)
・家族(親あるいは子供)による入籍への反対(相続など)
というのがありました。

別姓以外は、再婚の場合に多く見られるケースで、子供が小さくても成人していても、事実婚の事由になり得るようです。

では、事実婚によって夫婦になった場合、果たしてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか? 事実婚の現実や法律婚との違いについて、法律婚と事実婚の両方を経験したガイドが、自身の体感を交えて考察します。

メリット:法に縛られず、自立と自由意志が尊重される

自分も周囲も入籍することに抵抗がないカップルは、「なぜあえて入籍しないのか」を疑問に思うでしょう。両方のスタイルを経験した筆者としては「入籍しない」からこそのメリットはある、と実感しています。

「夫(男性)が主人ではない」のが、妻(女性)の立場としてもっとも違いを感じた点です。それによって、夫婦が「自立した関係」を保てるのです。実際、男性側としても、そこまで責任を負わなくて済む関係は気楽なのではないでしょうか。

経済的にも自立しているなら、妻だからといって夫の扶養に入る必要もなく、双方が世帯主になれば、勤務先への届出は独身のままでいいのです。フリーランスや自営の場合も、経理上、パートナーの有無による影響がないので面倒がありません(※世帯主を一方のみにした場合は、その限りではありません)。

また、事実婚は、法律婚のように「家と家の繋がり」ではなく、個人での結びつきが重視される形態だというのもメリットのひとつです。そもそも法律婚の場合であっても夫婦の権利は同等であるべきなのですが、男性の“家”に嫁ぐ女性としては、つい「○○家の嫁になったのだから」と立場に縛られてしまったり、夫に対して強く言えなくなるケースが多くあります。その点、事実婚は、戸籍上“相手の家”に入っていない関係なので、生家による“しがらみ”に左右されないで済みます。

もう1点が、自由意思による関係であることです。戸籍を一緒にしない夫婦関係は法的な結びつきがない分、互いの愛情だけが「互いを配偶者と認める契約」を継続させる唯一の事由となります。

一見、心許無いようですが、戸籍に縛られて愛情関係なく一緒にいる夫婦よりも、自由意志による夫婦間の結びつき(信頼関係)を深くすることができます。毎年結婚記念日を迎えるたびにふたりの間で“契約更新”として愛情確認をすることができるということです。


デメリット:世間がまだ、事実婚は結婚だと認めていない

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妊娠・出産を考えたとき、入籍婚との待遇の違いは浮き彫りに。戸籍上の面倒は、事実婚を貫く必要を問われる場面でもあります。

メリットを読むと、自由でしがらみのない結婚のように思えますが、デメリットと言える部分もまだ多くあります。

日本において事実婚は、夫婦として認められない場面が少なからずあるのです。とくに、妊娠・出産は、法律婚との待遇の違いが浮き彫りになり、事実婚を貫くかどうかを問われる場面でもあるのです。

筆者の知る事実婚カップルは、不妊治療を受けに行った医療機関から「事実婚を証明する契約書」(公正証書として認められるもの)の提示を求められたそうです。ちなみに、契約書を提示して不妊治療ができたとしても、自治体のサービス(治療費補助など)は受けられません。

夫婦の間に子供が産まれた場合も、当人同士がふたりの子だと認識していても、その子は「非摘出子」(ひちゃくしゅつし)という扱いになります。つまり、養子縁組の手続きをしなければ、夫は、(法律上の)子供の父親にはなれません。

つまり、事実婚の夫婦が子供を授かることは、今の日本ではかなりハードルが高いといえます。そのため、事実婚をしていた夫婦が妊娠を機に入籍するケースは少なくないようです。

事実婚が多いフランス(現在は法律婚より比率が高い)では、法律婚と同等の権利が得られるなど、出産に対する国の制度が整っていることも大きな理由です。日本でも制度が変われば、もっと事実婚は増えるのではないでしょうか。


結びつきの深さと生活スタイルに適した結婚を!

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事実婚でも結婚式を挙げることは可能です。入籍しないぶん、式を挙げたり結婚指輪を作るなど、形に残したほうがケジメにもなります。

子供を持たない夫婦の場合、中途半端な同棲をするよりは互いに相手に対する認識を変える意味で、“事実婚をする”というのは、ひとつの選択肢になると筆者は考えます。

「入籍しなくても夫婦である」というお互いの認識。これがただの同棲カップルとの大きな違いです。事実婚でも結婚式を挙げることは可能ですから、式を挙げたり結婚指輪を作ることがケジメにもなります。

あえてそう言ったのは、理由があります。事実婚の場合、共有の不動産を持っていたり、ビジネスパートナーをつとめていたりしない限り、ふたりの関係をあっさり終わらせることができてしまうという意味で、結びつきの深さは恋人同士と変わりないからです。

法律婚は離婚時に周囲まで巻き込んで揉めてしまいがちですが、事実婚にはそれらが一切ありません。当人同士が「別れる」と決意すれば、両親であっても「入籍していなかったし、いいんじゃない?」と軽く受け止めるケースがほとんどです。(実際、筆者が事実婚のパートナーと別れた際も、お互い相手の親には挨拶しませんでした。これが法律婚との違いを最も実感した場面でした)

万が一、ふたりの関係にヒビが入った際にこそ、「結婚生活を続けていくための話し合い」ができるかどうか……まさに愛情が問われる瞬間です。つまり、自由意志のもと、法律婚より浅い結びつきであることは否めません。結びつきが深くないということは、「別れる際に面倒が生じないこと」とイコールでもあるということなのです。夫婦が仲良しなうちは「婚姻届を出すか出さないか」程度の違いに思えるかもしれませんが、どちらかの頭のなかに“別れの二文字”が浮かんだとき、その関係性の脆さに気づくことになるかもしれません。

両方のスタイルを経験した結論として、入籍しない・できない特別な事由がないのであれば、あえて“入籍しない関係”にこだわらなくてもいいのでは、とも思います。しかし、結婚のスタイルは人それぞれ。法律婚でも、別居婚(法的には夫婦)でも、事実婚でも、夫婦にとっていちばんベストな関係を選べばいいと思っています。

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