「家族」がテーマという事で最近思い出した、母親との話をさせていただきます。

中学2年の終わり頃、僕はフォークデュオの「ゆず」さんに憧れギターを弾いてみたくなりました。

両親に「ギターが欲しい」と言うと「おお、そうか！」と何故かテンションが上がってる様子で早速その週の日曜日、両親に連れられて地元にある大型リサイクルショップに向かいました。

そのリサイクルショップはとても大きくて、家具・家電・ゲーム・古着・雑貨など、幅広い商品がありました。

そして、楽器が売っているコーナーに行くとアコースティックギターが何本かあり、いろいろ悩みながらシンプルでカッコ良かったYAMAHAのアコースティックギターにしようと決めました。

丁度その日、お店ではあるイベントが行われていました。

イベントの内容は店内オークション。

お店が用意している商品をオークションするというイベントでした。

そして、それ以外の商品でも持って来てくれたら今の値段より安い値段からオークションにかけられるとの事でした。

これはギターを安く買えるチャンスだと思い、表示価格15,500円だったギターをオークション会場に持って行き店員さんに渡し、会場の椅子に僕と母親は腰をおろしました。

オークションでは新品同様の電子レンジや冷蔵庫、テレビなどがかなり安く競り落とされていました。

そして、僕が選んだギターの順番が来ました。

一体15,500円のギターはいくらからスタートされるのだろう。オークションなんて初めてだしギターを買うという事自体に興奮しているので、もうとにかくドキドキしていたのを覚えてます。

するとオークションの進行役の店員さんがギターを持ち上げて言いました

「えぇ、こちらのギター5000円から！」

とても驚きました。

そんな額からいけるのか！と思いどんどん興奮しました。

しかし、まだいくらで競り落とせるか決まったわけではないし僕らが競り落とせるかどうかも分からない。

心配しながら会場の様子を伺うと誰も手を上げる気配がありません。

店員さんの「さぁ5000円！5000円！どなたかいないですか？」

という声が響いています。

これは5000円で買えてしまう！と更にドキドキし様子を見ながらそろそろ手を上げた方がいいのかなと思った時、隣にいた母親が僕の耳元でこう言いました。

「5500円って言いなさい」

僕は何故500円プラスにするのかよく分かりませんでしたがオークションってそういうものなのかなと思い、言われた通り「5500円！」と言いました。

すると僕の言葉を受けた店員さんが「はい！5500円！5500円！他ないか！」と言い始めました。

他のお客さんは手を上げる気配がありません。

お！じゃあ5500円で買えるじゃん！と興奮した瞬間、隣にいた母親がバッと手を上げ「6000円！」と大きな声で言いました。

僕は「何で？」と思いました。

店員さんは「はい、では6000円であちらのお客様で！」と言いギターのオークションは終了しました。

僕ら親子は2人で競合し1000円プラスさせてギターを競り落としました。

何故だろう？何故母親は僕に「5500円」と言わせた後に自分で「6000円」と言ったんだろう。

ギターは元の値段よりかなり安く買ってもらえたし何も文句はないんですが不思議で仕方ありませんでした。

今思えばきっと息子のギターを買うという状況とオークションという環境に緊張と興奮をしていたんでしょう。

どうあれ「6000円！」と言った時の母親が「いい顔」をしていたのは覚えてます。

だから僕の中ではいい思い出です。

そしてその時買ってもらったギターを今でも使ってます。僕の宝物です。きっと一生使うでしょう。

これが僕と母親の「初めてのオークション」の話です。

今度僕がギターを弾いてるところを見ることがあったら気にしてみて下さい。