生まれ変わるための第一歩（1/4）

「当機はまもなく離陸いたします。今一度シートベルトをご確認ください」

機内アナウンスに、うっすらと目を開ける。どうやら少しまどろんでいたらしい。

私はゆっくりと身を起こした。乾燥しているためか、喉が少し痛む。

フランスに向かう機内は混みあっており、あちこちで子供の泣き声や談笑する声が聞こえる。

そんな雑音も、私にとっては不快ではなかった。私は再び目を閉じて、深く息を吐いた。ほんの数時間前の出来事を思い出す。

そもそも私は、誰にも告げずに日本を発つつもりだった。なのに、出発の時刻が近づくにつれ、一目でいいから会いたくなってしまった。

「我ながら未練がましいですね」

思わず口から言葉が漏れてしまった。隣に座っていた元親がちらりと物言いたげな視線を向けてくる。私は慌てて口元を覆い、ゴホン、と咳払いをした。やれやれと言った様子で元親が再び手元の新聞へと視線を落としたのを見て、ほっと息をつく。