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迷える子羊の優雅な冒険(1/5)
「――ここ、ですか」
ある晴れた日の昼下がり。天童瑠璃弥は、とある店の前に立っていた。
「ここで私の望む、すべての物が手に入るのですね」
まるで由緒正しき聖堂を訪ねた時のように、両手を胸に当て、感慨深げに店を眺める。
その真摯な眼差しは、この店にはあまり似つかわしくないもので……気がつくと、天童は周りを行き交う人々の注目を集めていた。
(……おや? 視線を感じますね。――フッ。それも仕方のないこと。何故なら……)
「私は美しいっ! ハッ!」
バサッ! ピカッ!
「ひっ!?」
唐突に勢いよくジャケットの裾を翻し、あまつさえ謎の光まで放った人物を、人々は“見てはいけないもの”と判断し、すぐさま視線をそらして足早に立ち去っていった。
(フッ。この街は、奥ゆかしい方々が多いようですね)
急速に周りから人が去って行く現象を自分に都合のいいように解釈すると、天童は目の前の店――各種雑貨を豊富にそろえた、いわゆるバラエティショップへと足を踏み入れた。
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