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空回りのLove Beat(1/4)

「はぁ~っ……」

私立聖帝学園の音楽教師である加賀美蘭丸は、本日何度目になるかわからないため息をついた。

どこかやつれたようにも見えるその姿は、学園内でそのパワフルな授業(ライブ)スタイルから、『破天荒ロックンロールティーチャー』と名を馳せている人物とはとても思えない。

「……ったく。なんでオレっちがこんな目に……」

ぶつぶつと、これまた何度目になるかわからない愚痴を呟く。

その背には、新任教師の北森真奈美が、安らかな寝顔でおぶわれていた。

「はぁ~っ……。ったく、マジでどーしてなんでオレっちが……」

再び恨めしそうにぶつぶつと呟く加賀美だが、それはお門違いというものだ。

どうしても何も、この厄介事を文字通り背負い込んだのは、他ならぬ加賀美自身なのだから。

事の起こりは、テラスハウスで加賀美の『送る会』の準備を手伝っていた真奈美が、ついうっかりと眠ってしまったことに端を発する。

たまたまその場に現れた桐丘が眠ったままの真奈美を送っていこうとしたのだが、加賀美はそれを、反射的に止めてしまったのだ。

訝しげな顔の桐丘に、『自分の手伝いをしてくれたんだから自分が送っていくのが筋だ』と言ったものの、それもまた、反射的に口を出た言葉でしかなく。

その時の加賀美は、どうしてだか真奈美を他の男の手に触れさせたくなかったのだ。

自分でもよくわからない感情に動かされた行動を、桐丘はすべて見透かしているような微笑で受け止め、真奈美を送る役を譲ってくれた。

つまりこの現状は、すべて加賀美が招いた結果なのだ。

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