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レースリングに愛をこめて(1/4)

「……王子はその後かわいい姫と結婚し、幸せに暮らしたのでした、おわり」

読んでいた絵本をパタン、と閉じるとふたりの寝息が聞こえてくる。亮と大は寄り添って目を閉じ、穏やかな表情で眠っていた。

ふたりの寝顔はいくら見ていても見飽きるということはない。だが、今日の桐丘にはやるべきことがあった。

王子たちを起こさぬよう、静かな声で「おやすみ」と告げて部屋の明かりを落とす。そして一人キッチンに戻ると、よしっ! と気合を入れる。

生徒たちには、手編みのコースターをプレゼントすることにした。明日は先生とその材料を買い出しに行く予定になっている。

生徒たちのコースターを作る前に……どうしても作っておきたいものがあった。それは、先生にプレゼントする手編みのレースリングだ。

何度もデザイン画を描き、ようやく彼女にぴったり似合いそうなレースリングを考え付くことができた。あとはこれを形にするだけだ。

先生の元気なイメージと、内に秘めた優しさと穏やかさを表現するのに、ずいぶんと苦労した。

結果、複雑なデザインになってしまったので、完成させるのにも少し時間がかかってしまうだろう。

けれど、桐丘の胸は躍っていた。これを手渡したときの先生の顔を思い浮かべると、ついつい頬が緩んでしまう。

「っと、明日までに仕上げなければならないのだから、いつまでもこうしてはいられないな」

桐丘は机の上に道具を用意し、作業を始めた。一度着手してしまえば、完成するまで集中力は続く。一針一針、想いをこめて丁寧にレースを編んでいく。

やがて、窓の外はゆっくりと白み始めていた。

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