ド素人のRPG制作現場潜入レポ

~⑦神秘の領域 コンポーザーのお仕事~

こんにちは。ケムコ社員Nです。
いつもは週末にこのコラムを書いているのですが、今回は車の12カ月点検とか料理とか台所の片付けとかをしてる間に見事に忘却してしまい、涙目になりながらいま月曜日に書いております。 執筆をサボった代償として「ラーメンの『スープが麺にからむ』というのが実は単に『麺に塩気が効いている』ということだった」 という事実が実証実験から判明したんですが今回のコラムこの内容でよくないですか
ラーメンネタで一本書き上げたのち全ボツ食らうという壮大なギャグをかましたい誘惑に駆られますが、本日は天下の月曜日です。サクサク進めて業務に戻らねば。

【ゲーム制作における一般的な職種一覧】

☑プランナー(企画)
☑ディレクター(監督)
☑プログラマー(制作)
☑ライター(作文)
☑グラフィッカー(作画)
□コンポーザー(作曲)
□ボイスキャスト(声優)
□デバッガー
□マーケター

今回はコンポーザーさんです。こんな呼び方したことも聞いたこともねえ。またかって感じですが一応英語表記としては、作曲家はコンポーザー(composer)となります。
ゲーム産業に関わる音屋さんは一般的にはサウンドや音響、作曲、サウンドエンジニアなど様々な肩書でクレジットされているかと思いますが、 これらを総称する「組み立て、創造する(compose)者」として、本コラムでは敬意とともにコンポーザーさんと呼んでいきたいと思います。
そして前回申し上げたようにケムコには専業コンポーザーはおりません。 またケムコの業務は音楽と切り離されていることが多い(後述)ためあまり書けることがないのですが、ひとまず初心に立ち返り、素人なりにゲーム音楽というものに体当たりするつもりで書いていくことにします。
まずは(そろそろ定番になりつつある流れですが)、基礎編です。

音楽とは何か

まずとは振動です。 大音量のスピーカーに近付けばビリビリと空気の振動を感じることから、小学校の理科の内容を忘れてた方も感覚的に理解可能かと思います。 振動とは何かということについては物理学のむずかしい話になるので適度にググっていただくとして、 逆を返せば耳・聴覚というのは振動を捉える生体センサーであって、本来はそれ以上でもそれ以下でもないのですね。 光を捉えるセンサーである目、ガスを感知するセンサーである鼻、液体の成分を感知するセンサーである舌、温度や物理的接触の有無を判じるセンサーである触覚・・・ どれも分解してみれば、生物として生存競争に勝ち残るため周囲の色々な状況を感知するという目的のために発達し、現代まで残ってきた器官に相違ありません。
では、そんな「周囲の振動」を感知するものに過ぎない耳がなぜか喜ぶ「音楽」とは何なのでしょうか。 実は現代においてもこの問いへの確定的答えを人類はほとんど得ておらず、よって音楽の科学的定義は「なんか聴いて心地よい空気振動」でしかないということになります。
音楽というのは不思議なもので、偶然を除けば自然界には存在しない(自然の音を音楽として捉えられる感覚をお持ちの方もおられるようですが)うえ、生存にも特に関与しないわりに、人間の心を強くゆさぶります。 また、適当に音を並べれば音楽になるというわけではなく、心地よく感じられる特定の音の並びというものが文化ごとにそれぞれ存在し、 それは別の文化に持っていっても(異国情緒を感じさせこそすれ)概ね心地よいものとして受け止められる・・・つまり共通する感覚として受け止められます。 とても不思議なことだと思いませんか?なぜ人間という生物は、世界中である程度共通する音楽感覚というものを持っているのか・・・筆者はとても不思議です。

音楽理論

音楽という謎に対する包括的な回答はまだ出ていないものの、どうすれば「なんか聴いて心地よい空気振動」を作れるかという経験則や部分的な科学的知見は、 文化圏ごとに長い時間をかけて研究・集積・洗練されてきました。それが音楽理論と呼ばれるものです。
ここでひとつブチ上げますが、現代のゲーム業界で作曲家としてやっていくには、多かれ少なかれ音楽理論に関する知識が必須だと筆者は考えます。
なぜかというと筆者も作曲に手を出して壁にぶち当たったからなのですが、それは後述ということで。

コンポーザーのお仕事

少々前後してアレですが、ゲーム産業におけるコンポーザーさんのお仕事をざっくりとまとめていこうと思います。
読み進めると分かると思いますが、コンポーザーのお仕事は昔ながらの進め方今時の進め方大きく異なります
ですのでそれぞれの方法を併記してみましょう。

①音を作る(サンプリング・シンセサイジング)

・・・って何やねん、とお思いかもしれませんが、ゲームに使う音は、音楽を演奏する楽器の音にしろ、効果音(Sound Effect = SE)にしろ、最初はどうにかして「鳴らす」必要があるのですね。
そういう場合、誰かが作った音を買うのが一番簡単なのですが、権利問題を回避したり、オリジナルな音を用意したりする目的で音を最初から作ることもあります。 また、ゲームメディアが大容量化したことでゲーム内にボイスなども入れられるようになりましたが、 当然、声は声優さん(次回コラムにて詳しく扱う予定)に喋ってもらったものを録音せねばならんわけです。

そういった時・・・
  • 昔ながらの進め方では、楽器を実際に鳴らして音を採音するとか、人間の声や歌をボイスデータとして採音するとかいった手法がとられます。 また、敵をざっくり斬り倒すときの効果音をつくるためにキャベツをざっくり切って採音するとか、 寄せてはかえす海の音をつくるために砂をいれた箱を揺するとかも聞く話です。 某「星の戦争」映画にて出てくる閃光剣のぶぉんぶぉんいう音は映写機のモーター音が元だとか。 要は実際に音を鳴らし、採音装置(サンプラー)を使って録音(サンプリング)するんですね。 ちなみに筆者は弊社発売の「脱出ゲーム」スマートフォン版で、誰もいなくなった深夜のオフィスで先輩と協力し棚をガチャンガチャンする音をサンプリングしたことがあります。 あの時は色々大変だった。
  • 今時の進め方では、シンセサイザーと呼ばれる機械(あるいはソフト)を用いて、空気振動の波形を生成する(シンセサイジング)ことができます。 「ピー」という単純な正弦波等ならカンタンに作れますが、楽器や人間の声に似せた音や、耳に心地よい様々な音を機械的に合成しようと思うとかなり大変です。 あるいは、買ったり録りためたりしていたデータを合成して新たな音を作り出すことも可能です。 某「星の戦争」映画にて出てくる敵の戦闘機の飛行音は、ゾウの鳴き声と列車の音を録音して混ぜてつくったとか聞きますね。 筆者もツールを駆使しPVのナレーションの危険な発言を隠すためのピー音を作ったことがあります。 そんなんばっかりか。

②曲を作る(作曲)

曲を作ると一口でいっても様々なレベルが存在します。鼻歌歌ってたら突然に新しいフレーズが生まれたというのも立派な作曲です。 筆者も通勤中、車を運転しながら「ヌートリアはかわいそう」という発表の機会が一切ない曲を作ったことがあります。
しかしながら職業として音楽を生み出し続けようとすると様々工夫が必要です。たとえばコード(和音)進行というものがあります。 これは「この和音(音を複数一緒に鳴らすこと)は楽しい感じ/悲しい感じ」といった基本パーツの特性の理解と、「このコードの次にはこのコードが来た方が自然」といった 和音間のつながりの理解から成る音楽理論の実践的技術体系なのですが、これを理解していると曲の着想や調整に有利に働く場面が多いようです。
  • 昔ながらの進め方では、色んなやり方はありますが、基本的にはギターやピアノ等の楽器を携えて実際に鳴らしながら、 主旋律のコード進行を組み立て、最終的に譜面にまとめるといった作業になるようです。
  • 今時の進め方でも基本的にはすることは変わらないのですが、テスト演奏や譜面の記録編集、コード進行の提案などを専用のソフトやハードに任せることで、効率を上げることができます。 サンプリングやシンセサイジングで得た音を並べて曲にする装置またはソフトをシーケンサーといいますが、最近では極めて高性能なものが生まれており、手作業の困難さを一気に減らしつつあります。 ちなみに筆者は、今自分が書いているゲームシナリオに登場するわらべ歌の曲をシーケンサーに打ちこんで出力し、これを③の編曲に回したことがあります。 歌詞やフレーズが本編と密接に結びついていたため、こちらで作った方が確実だったからですね。この話にオチはないよ! いつもヘボい仕事をしてるわけじゃないから!!

③音や曲を調整する(編曲/特殊効果)

受け取ったメイン旋律の楽譜をうまくパート分けしたり、一部別の楽器やフレーズを入れたりしてアレンジを行っていく作業です。 作曲の段階では主旋律やメインフレーズのみしかなく、楽器割り当てを含む曲としての体裁を整える作業を編曲に丸投げするケースも少なくないので、編曲にこそ音楽理論が重要になるとも言えるでしょう。
  • 昔ながらの進め方では、やはり譜面制作がメインになります。
  • 今時の進め方では、シーケンサーを用いての譜面制作だけでなく、サウンドミキサーと呼ばれる装置を使って様々な曲素材を組み合わせ(ミキシング)したり、 エフェクターと呼ばれる装置やソフトをつかって音に特殊効果をかけたりすることも容易で、曲に色々なアレンジを加えることができます。

④演奏・演唱する(演奏)

  • 昔ながらの進め方ではそのものズバリ、楽器や声によって音楽を演奏・演唱するということになりますね。 コンポーザー本人がやる場合もあれば、専門のミュージシャンを招いてやることもあります。 主に豪華なゲームの素材やオープニングのボーカル入りソングを生音で撮るときなど、景気のいいプロジェクトで聞く話ですね。 やはり生音は音が良いとか、アーティストの癖や技術をそのまま落とし込んだ生き生きとした曲を録れる等の利点があります。
  • 今時の進め方の場合、シーケンサーがそのまま演奏装置にもなります。 音源(演奏装置やサンプリングした楽器の音)を入れ替えるだけで音の雰囲気を変えることもできますし、演奏中にリアルタイムでエフェクトを調整したりすることで様々な効果をつけることもできます。 生音とはまた違った正確無比な演奏を行うことができますし、何よりアーティストを集めなくていいぶんコストはだいぶ安く済むようです。 ちなみに今流行のボーカロイドも音源&シーケンサーの一種です。ボーカロイドを使って某ゲームのPVの音声を作ったことならありますがそれは黒歴史ということで以下略。
前回グラフィッカーの記事を思い出しますが、こんな感じで工程ごとに必要な技術も機材も異なってくるため、当然分業するという発想も出てきます。 作曲のみして編曲を誰かに依頼するとか。演奏のみ有名アーティストを使うとか。サンプリング用にスタジオを借りるときは専属スタッフも一緒に雇うことになりますし。
一方で、サンプラーやシンセサイザーやシーケンサーやミキサーやエフェクターが1つになったデジタルオーディオワークステーション(DAW)と呼ばれるコンピュータソフトも多数存在し、 PCやMAC上で全てのコンポーザーの仕事を実現することもできる時代です。 こういうスタイルでサウンド制作を楽しむステキ趣味をデスクトップミュージック(DTM)といい、趣味にしている人は動画サイトなどに多数ひしめいています。 プロ並みのスタジオや機材を整えなくても、ある程度のものならばご家庭でできてしまう。すごい時代ですねーまったく。

ゲーム音楽ならではの苦労

以上は現代のサウンド制作シーンにおいておおむね共通の話なんですが、ゲーム音楽ではさらに特殊な事情が絡んできます。

ゲームシーンに合ったサウンド

1本のゲームには、基本的に複数のシーンが存在します。作る側では画面スクリーンという単位で呼びますが、 例えばタイトル画面、メニュー画面、メイン画面、ゲームオーバー画面など・・・これら全てのシーンで全部同じ音楽が流れたらどうでしょうか(いや、昔はそういうのもあったと思いますが)。

前々回のコラムでストーリーは人間の感情を操作するプログラムだ、といった趣旨のことを書きましたが、 一方で音楽は耳に勝手に流れ込んできて感情を強制的に励起することのできる魔法のようなものだと思っています。 激しい音楽は激しい感情を、悲しい音楽は悲しい感情を・・・ということもありますし、逆に明るい音楽と悲しいシーンの合わせ技で泣き笑いのような複雑な感情・感動を引き起こすこともできます。 それだけ音楽はプレイヤーの心情に訴えかける強力な作用を持っています。
それを踏まえてシーンごとの音楽を考えれば、例えばゲームオーバー時に「あ~やっちゃったなあ、もう一回やろう」と思わせたいか「全滅か・・・なんて悲しいんだ・・・次は二度と死なせないからね・・・」 と思わせたいか「クッソオオオオオ!!銀河帝国め!!!よくも、よくもォオオオオ!!」と思わせたいかで流すBGMは変わって当然。 シーンに求められる感情操作をBGM側でどこまで果たせられるか、コンポーザーの腕の見せ所となります。

聴き飽きない・うっとうしくしない

これが映画やドラマなどのBGMの話であれば、同じシーンは一つとしてありませんが、ゲームであれば何度もタイトル画面を見て、何度もゲームオーバーを見ることになります。 聞き飽きないよう、それでいてプレイヤーをゲームデザインが意図する操作へと誘導できるよう、適切な曲を設定しなければなりません。
特に短いループをヘビーローテーションする曲などは速攻で聴き飽きるおそれがあるため、印象的な短いフレーズは慎重に採用しなければなりませんし、逆に複雑すぎるBGMは自己主張が激しくてうっとうしいかもしれません。
またSEもかなり大事です。ボタンを押すたびに「ビロビロビロビロ!!」と激しく鳴音するとうっとうしいでしょう? たまにそういうのあるけど。
かなり危険な地雷になり得るんですが、デバッグしてる間に慣れてしまって見逃しがちなんですよね。
クリック音や攻撃音などゲーム中で何度も使われるSEはうっとうしいものでなく、聴いて耳に心地よいものである必要があります。

ゲームとの調和・融合

プレイヤーを飽きさせてはならないからといって、曲の中で山あり谷ありを作りすぎると気が散ってゲーム本編に集中できなくなるかもしれません。 むろん、薄すぎて空気になってもいけません。BGMはあくまで背景音、ですがゲーム本体と一体となって複合的な体験を作り出すものでなければなりません。
この辺りを理想的に実現するには、結局はディレクターを中心とするゲーム制作チームの一員としてプロジェクトに加わり、グラフィックやシナリオ、プログラムの内容を理解したうえで、 実装と作り直しという試行錯誤を繰り返すしかありません。
またこういったことからゲームコンポーザーは極めて幅広い音の引き出しを必要とします。 幅広い音楽ジャンルで作曲ができること、たくさんの効果音のストックがあることは、ゲームプロジェクトに役立ちこそすれ邪魔になることなどありません。 この戦闘に唯一合うのはロックじゃなくてマンボだった!とかいった珍しい必要性が生じた時、どれだけ対応できるかはコンポーザーのジャンルの引き出しの広さに完全に依存します。 これは特にマップごとにBGMが変わり得るRPGでは大きな問題で、冬の王国ではロシア民謡っぽいのを流したい!砂漠ではアラビア風だ!などといった需要は当たり前に発生するため、 色々作れる方はありがたいです。究極的には「この誰も見たことのないオリジナルなファンタジー世界にふさわしい曲を」なんて難題が来るかもしれませんし。

技術と仕様に適応できる柔軟さ

これはより技術者としての知識や技能を問われる部分ですが、 ゲームによっては通常の音楽のようにイントロとアウトロを置かない・あるいはアウトロから次のイントロにスムーズにつなげられるような曲(ループBGM)を採用すべき場合があります。 基本的にゲームのBGMは鳴りっぱなしになるためです。この場合、うまく作曲したうえでデータも最適化しないと切れ目がブツッとなったり不自然な無音が生じたりするわけです。 データ量が膨大になっている昨今、うまいループの作成には音波波形の繋がりを調整するといった非常に繊細な技術が必要になるかもしれません。
また音楽をデジタルデータとしてゲームに組み込む際は、データの様々な規格や圧縮方法・保存形式に精通していないと、そもそも音が鳴らないとか、正常に鳴らないとか、ゲーム動作が非常に遅くなるなどといった話になりかねません。 また、ゲームプログラムというのは概してマシンに負担をかけるため、グラフィックにしろサウンドにしろ、ある程度質を削って容量を落とすといったギリギリの調整が現場では行われます。 そういった問題が生じた際、対応できるかはコンポーザーの技術力頼みになります。
場合によっては、独立した音楽データを持つのではなく、ゲーム側でスコアデータを読み込んで鳴らしたほうが、容量も軽く、リピートも容易だといったことも生じるでしょう(昔は大体そんな感じだった)。 その場合、コンポーザーは普段使い慣れたDAWではなくゲームエンジンが読み込める形式で音楽データを入力せねばならないかもしれません。 非常に大変な作業です。弘法筆を選ばず、なんて、ソフトを土台として成り立っているデジタルアートの世界ではなかなかありませんから・・・。

オリジナリティとアーティストとしての矜持

上記したようなことを完璧にこなせるデジタルサウンドオペレーター能力は極めて珍重されるでしょう。その一方、こんな需要もだいたい同時に発生します。 しっかりと個性を発揮し、作品に独自色を与えてほしい。その個性でもって作品を強く牽引し、唯一無二の傑作に仕立ててほしい。 プロジェクト側の需要に沿っただけの凡庸な曲じゃなく、仕様に反さないくせディレクターが予想もしなかった個性的な曲が欲しい。
ゲームクリエイターという生き物は、なんでこうもワガママなんでしょうね。無茶言うな、の一言で切り捨てられても仕方ないところです。
そういった無理難題に対し、自分は技術者であると同時に芸術家でもある、自分の芸術性を発揮しろと言われて引き下がれるか、と、アーティストとしてのプライドをもって取り組めるかどうか。 これも最終的に、出来上がったゲームをプロダクトからアートへと進化させる一因になり得るのです。

・・・などと色々挙げてきましたが、コンポーザーにここまでやってもらえるケースはうちではあまり無いことが多いです。

ケムコの場合

ケムコはパブリッ(略)
毎度の話で恐縮ですが、ケムコは他社に依頼してゲームを作るため音楽制作とは普段は縁が薄いです。
基本的には開発会社さん側にコンポーザーさんがいるか、あるいは開発会社さん側が必要に応じてコンポーザーさんにサウンドの作成を依頼し、それを組み込むという形になります。
開発会社さんごとに音響のクセはかなりありますが、必ずしも自社で作っているわけではなく、同じ音響制作会社さんに依頼しつづけているからかもしれません。

ちなみにRPGで最低限必要なサウンドはバックグラウンドミュージック(BGM)SEの2種類です。 さらに「ちょっと長めのメロディがあるSE」あるいは「短めワンフレーズのみのBGM」をジングルと呼びます(レベルアップ時にぱぱぱぱーぱーぱーぱっぱぱーとか鳴るアレ)が、 細かく分けてもこの3種類を作ることになります。

音楽を専門に作っている会社さんは多数あり、依頼料はピンキリですが、多くのところで曲の長さや複雑さに応じてお値段がつきます。 当然ながら長く複雑な曲ほどお高くなるわけです。複雑高度の最たるものが、ボーカルのつく歌曲・歌モノであり、歌モノをしっかり作ろうとすると予算の何割とかいうレベルでお金がかかったりします

業界に入って感じますが、グラフィッカーに比べて、コンポーザー業務については、こういった会社さんへの外注が多い気がします。 なぜかと言えば、視覚情報であるグラフィックは聴覚情報であるサウンドよりも作品やブランドのイメージを印象付ける効果が高いこと(つまりグラフィッカーは「ブランドの顔」として囲い込む必要性が大きい)、 グラフィック素材は制作にかなり時間がかかる一方でサウンド素材は決め打ちで一気に作ることできるため、スタッフを社内に置かないほうがコスト的に有利な場合があること等もあると思います。 もっと突き詰めれば、権利フリーの素材を使ったり、既成の素材を買ったりといったことすらあります。
なので、コンポーザーさんを雇うのは、コンポーザーに仕事を常に供給できる大会社さんや、「ウチの売りは音楽だ!」というブランド戦略で腕のいいコンポーザーさんを囲い込み、 音響にこだわった作品を出している会社さん・・・かもしれません。
もしあなたがゲームコンポーザーを志しており、充実した音楽技能を持っていて、かつゲーム会社での求人がなかなか見つけられない場合、こういった外注を受けている音楽制作会社さんの門を叩いてみてはどうでしょうか?

むかしむかし、はるかかなたのDTM系で・・・

ちょこちょこ書いている通り、筆者にはケムコに来る前からコンポーザースキルの習得を目指していた時期があり、このためごくわずかに音関係の業務上の作業を(勝手に)したことがあります。
ちなみにこれまでの30年の人生で音楽技能を身に着けようとして挫折した回数は片手に余ります。 えーと、高校時代ピアノに挫折、中学時代ギターに挫折、大学時代トランペットに挫折、某カードRPGの自作シナリオで数十秒ループのチープなBGMを突っ込んでみたが公開挫折、 文芸サークルのメンバーでビジュアルノベルゲームを作ろうとして挫折・・・すべて途中で挫折し放り出していますね・・・。
サウンド関係で完成させたものといえば中学時代、パソコン部で当時「ガイル」と呼ばれるとブチ切れる特性を持っていた友人を 煽るためにFM音源で鳴音させた「ストリートファイターⅡ ガイルのテーマ」の「テッテレッテレー」を延々ループさせる奴くらいです。

えーそろそろゲーム制作について完全にシロウトであったという嘘がバレそうなので自分で潰しておきますが、 実は筆者は小中学校時代からRPGツクールだのシューティングツクールだのN88ベーシックだのでゲーム作りを志してきた経験を持ちます。 だからプログラミングが何かとかいったことについてはある程度知識はありました。ただ完全に独学だったため、効率のよいアルゴリズムとか、一般的なCG製作法とか、 プロジェクト管理の方法とかは全く知らずに来ましたので、ある意味業界知識ゼロということでご了承いただきたい。

それはともかく、こんな体験から、筆者はグラフィッカーの時と同様に、コンポーザー技能についても結局は、なんど挫折を味わってもやめないで、執念をもって続けてきたことが技術として手元に残ると信じるに至りました。
加えてもう一つ大事なことは、作品を完成させることだと思っています。
完成というのは、たとえ大きな仕様カットや妥協があったとしても一通り制作にケリをつけ、それを誰かに対して公開することです。 友人でも動画サイトでもいいので公開しましょう。そしてボコボコに叩かれましょう。
自尊心を傷つけられたムカつきと黒歴史を生産してしまった自己嫌悪を胸に、次回作への執念を燃やすのです。

ゲーム制作ってホントに創造力の暗黒面(ダークサイド)を駆使するものですね。
闇は良いぞ。コーホー。


いちおう暗黒面以外のことも。 これはあらゆる創作に共通する話でしょうが、とくに音楽については、繰り返し色々なものを作ることでノウハウが溜まってゆき、良いものが作れるようになっていくように思います。 というのも、特にデジタル作曲では音楽理論もさることながら、どれだけDAWの機能を使いこなせるかによって作れるものがどんどん広がっていくのですね。 現在は無料で手に入るDAWもあり、パソコン一台あればDTMを志すこともできます。とにかく色々作ってみてツールに慣れて、また作ってみる。 前よりもさらに凝ったものを作ってみる。壁にぶち当たったときには他人の音楽をたくさん聞いたり、作曲の本をめくったりしてみる・・・作る前に勉強するのではなく、作りながら勉強する姿勢が大事だと思います。 必要は発明の母、実践を通して学んだ知識こそ身になろうというものです。
ちなみに筆者の壁はやはりコード(和音)でした。ギターをじゃかじゃか鳴らしたいとか思ったとき、どうすれば思った音が出せるのか途方に暮れてしまうわけです。 でも今でも音楽づくりには憧れています。
ああ、この仕事が終わったらDTM再開するんだ(死亡フラグまたは三日坊主フラグ)。

今回のまとめ

  • コンポーザーにも様々な技能、様々な専門職がある
  • ゲーム会社的には音楽が外注メインな場合もある
  • 音楽を作ってみたいならとりあえずDAWを入手してやってみよう
  • スターウォーズエピソード7たのしみ
次回は声優さんの話ですね。これこそ本当に書くことあるんだろうかと思いますが、今回も何とかなったので次回も大丈夫でしょう(つぶれる会社の言い分)。 ちなみに筆者は声優にも憧れていました。どれだけ夢いっぱいなのか。このコラムが社内展開されるたびにどんどん痛々しい三十路として扱いの生温かさが上昇している気がします。 そして気がつけば月曜が終わっていますが気のせいだと思い込むためこれから自己暗示に入ります。がんばれ筆者、お前はきっとなんにでもなれるよ多分・・・。

※本コラムへの感想と「ヌートリアはかわいそう」編曲をタダでやってやろうという申し出はkeitai-info@kemco.jpまで。

【07回 了】



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