「育てる大人」になれないアラフォーが抱く停滞感

大美賀 直子
大美賀 直子

アラフォー・シングルの永遠のテーマとは?

やりたいことはやってきた……でも「これでいいのかなぁ?」

やりたいことはやってきた……でも「これでいいのかなぁ?」

幼いころから親や先生に愛され、たくさんの友だちにも囲まれてきた。学歴はまあまあ悪くない。ほぼ希望通りの仕事にもつけて、収入もまあいい方。気がつけばアラフォーだけど仕事は面白いし、たぶん当面は続けていけそう。毎年1回は海外旅行を共にするシングル仲間、飲み友達もいる。

100%ではないけど、「やりたいこと」はほぼやってきた。「自己実現」はできてる方だと思う。こんなふうに毎日を謳歌しているのに、30代も半ばを過ぎたころから、なぜか「あれもこれもやってきたけど、これでいいのかなぁ?」という思いがふと浮かぶ。

『負け犬の遠吠え』や『Around 40』のみならず、30代後半からのシングルを描く作品の多くは、こうしたぜいたくともとれる心境をもとに展開されます。うっかり他人に相談すると、「好きに生きてるんだから、じゅうぶん幸せでしょ!」と突っ込まれてしまう。でも、当の本人の心にはいつもモヤモヤした気持ちが張りつき、1人になったときに「これでいいのかなぁ?」という問いがふつふつと湧き出してしまいます。


30代後半からの発達課題が心に引っかかる

友達や恋人との間に、自立的で親密な人間関係が築けてきたか

他人との間で自立的で親密な人間関係を築いているか

「『大事な宿題』をやり残しているような気がする」……アラフォー・シングルが抱くモヤモヤは、よくこんな言葉で表現されます。

多くの人、とくに女性は、その「大事な宿題」を「結婚・出産」とリンクさせて考えるものです。しかし、ステレオタイプな回答に飛びついてしまうと、問題の本質が分からなくなってしまいます。

私は、この年代のモヤモヤの本質とは、「自分だからこそできる何かを生みだし、育てているのだろうか」という問いなのではないかと思います。

心理学者ののE.H.エリクソンは、人の一生を8つの発達段階に分け、各時期にはそれぞれの発達課題がある、と説きました。社会人になる頃から30代前半までの時期は「前成人期」と呼ばれ、この時期の発達課題は「親密」と定義されています。つまり、友だちや恋人など他人との間で、自分を見失わずに親密な関係を築くことです。

さらに進んで、30代半ばから60代にかけての「成人期」の発達課題は、「生殖性」と定義されています。つまり、何かを生みだすこと、そして育てることです。

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