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 三重県警は、特殊詐欺の被害者を対象に行ったアンケートの結果を発表した。昨年1年間に県内で被害に遭った人の4割が、被害防止対策を「何も行っていなかった」と回答した。「自分は大丈夫」という思い込みが、犯行グループにつけ込まれるケースもあると指摘されている。県警は調査結果を重く受け止め、対策を強化する方針だ。

 アンケート結果によると、「自分は被害に遭わないと思っていた」「どちらかといえば被害に遭わないと思っていた」と回答したのは全体の計91・7%に上った。40・2%は被害防止対策を「何も行っていなかった」と回答した。

 特殊詐欺について日頃から相談できる相手が「いる」と答えた割合は79・2%を占めたが、実際に特殊詐欺の電話やメールを受けた後、「誰かに相談した」と回答したのは16・0%にとどまった。

 だまされた理由は、「パニックになったから」(27・2%)、「警察や銀行と言われて全く疑わなかった」(20・5%)との回答が目立った。

 県内では昨年、特殊詐欺の被害認知件数が274件(前年比132件増)、被害額は7億760万円(同3億3130万円増)となり、いずれも過去10年で最悪となった。

 県警によると、犯行グループは録音を嫌うため、自動録音機能などが付いた固定電話機が被害防止に有効と説明している。通話内容の録音を相手に伝え、自動で録音する装置の貸し出しも無料で行っている。

 40万円をだまし取られた津市の女性(85)は「高齢の私に優しく対応してくれて、すっかり信用してしまった」と被害に遭った状況を説明した。

 昨年6月、一人暮らしの女性に、金融機関の店長を名乗る男から電話があった。「手続きのため、口座の暗証番号が必要」といわれ、伝えた。自宅に来た別の男にキャッシュカード2枚を渡した。その後、口座に入っていた40万円が全て引き出されたという。被害に遭ったのは年金の支給日だった。

 女性は偶然、犯人がかたった金融機関の担当者と直前にやり取りしており、信じてしまったという。

 女性は「このような詐欺があることも知らなかった」といい、「安易に人を信用できない」と何度も繰り返した。犯人を責める気持ちよりも、被害にあった自分を責める気持ちが大きくなったという。

 被害で失った40万円は保険で取り戻すことができた。ただ、県警によると、必ずしも取り戻せるわけではないという。