中国老荘思想研究家の田口佳史氏は、25歳の頃、ジャーナリストとしてタイを訪れた。
朝8時頃に取材地であるナコンパトムへ猛スピードで向かっていた田口氏は、見渡す限りきれいな田園地帯に目を奪われた。特に、体が和牛の2倍ぐらいあり、角も立派という水牛2頭が、小さな子どもに引っ張られて脱穀をしている風景をカメラに収めようと、車を止め、ずかずかと田んぼに入って、その水牛を写真に撮ろうとしていた。
その時、田口氏は、その水牛2頭の角で串刺しにされる事故にあってしまう。水牛は刺すと跳ね飛ばす習性があり、跳ね飛ばされた田口氏の体は裂け、内臓から何から全部出てしまいそうなひどい状態になったという。
病院へ担ぎ...
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人間関係
中国老荘思想研究家の田口佳史氏は、25歳の頃、ジャーナリストとしてタイを訪れた。
朝8時頃に取材地であるナコンパトムへ猛スピードで向かっていた田口氏は、見渡す限りきれいな田園地帯に目を奪われた。特に、体が和牛の2倍ぐらいあり、角も立派という水牛2頭が、小さな子どもに引っ張られて脱穀をしている風景をカメラに収めようと、車を止め、ずかずかと田んぼに入って、その水牛を写真に撮ろうとしていた。
その時、田口氏は、その水牛2頭の角で串刺しにされる事故にあってしまう。水牛は刺すと跳ね飛ばす習性があり、跳ね飛ばされた田口氏の体は裂け、内臓から何から全部出てしまいそうなひどい状態になったという。
病院へ担ぎ込まれて、生きるか死ぬかという、生死の境を行き来する状態が続く中、親切な在留邦人の方が「そろそろ退屈しているだろうから、何か本でも差し上げたらどうか」ということで、いろんな本を貸してくれた。
その中に『老子』と『論語』があり、特に『老子』を読んだ日は、とても落ち着いたという。それまでは、寝ると翌朝にはもう目覚めないのではないか、寝ることは死を意味するのではないかと、死への恐怖を非常に感じて、眠ることが怖かった。
なるべく眠らずにひたすら目を大きく開いていたのですが、そんな時に『老子』を読むと、何かさっぱりして、「ああ、今まで寝ていたのか」と目覚めた時に自分が寝ていたことも忘れるくらい熟睡することができたという。
『老子』の説いている生死論が非常に素晴らしく、「死とはそういうものか」と救われた思いがしたという。
こうして田口氏は中国古典思想の世界へぐっと入っていくことになった。
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