●今、ひそかに話題の「未成線」とは
廃止された鉄道の路線跡は、レールや駅舎が撤去されずに放置されることも多くあります。このような「廃線跡」は、人知れず朽ちていく姿がどこかノスタルジックでもの悲しく、鉄道ファンだけにとどまらない幅広い人々の心をつかんでいます。そして、この廃線跡とよく似た存在である「未成線」もまた、近年ひそかに注目を浴びつつあることをご存知でしょうか。
「未成線」とは、文字からもわかるように「未完成の路線」です。そして、この未完成とは建設中ではなく、「完成する前に計画が中止された」ことを意味します。つまり、つくりかけのまま永遠に完成しない路線が「未成線」なのです。未完成の未成線は...
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●今、ひそかに話題の「未成線」とは
廃止された鉄道の路線跡は、レールや駅舎が撤去されずに放置されることも多くあります。このような「廃線跡」は、人知れず朽ちていく姿がどこかノスタルジックでもの悲しく、鉄道ファンだけにとどまらない幅広い人々の心をつかんでいます。そして、この廃線跡とよく似た存在である「未成線」もまた、近年ひそかに注目を浴びつつあることをご存知でしょうか。
「未成線」とは、文字からもわかるように「未完成の路線」です。そして、この未完成とは建設中ではなく、「完成する前に計画が中止された」ことを意味します。つまり、つくりかけのまま永遠に完成しない路線が「未成線」なのです。未完成の未成線は、一度完成している廃線跡とは似て非なる存在というわけですね。
廃線跡は一度お披露目されて電車が通っており、廃線が決まったときにも話題になるので一般の人でも存在を知る機会がたびたびあります。しかし、未成線はそもそも完成していないのでお披露目されるはずもなく、電車が通ることもないまま静かに放棄されるので、知られる機会がほとんどありません。このため、鉄道ファンの間でもあまり有名ではなかったのですが、近年になって観光資源に採用する自治体が増えてきたことから、認知度が上がってきました。
鉄道を通すとなれば莫大な費用がかかる大掛かりな工事になるので、本来なら途中で投げ出すような事態はあってはなりません。しかし、大掛かりだからこそ建設中に社会情勢が変わってしまい、資金が足りなくなったり、必要な用地や物資がそろわなかったり、なかには先に便利な道路が開通して鉄道が不要になってしまったり……。そんなやむを得ない事情で未成線となった路線は、日本全国に存在しているのです。
●夢と希望の新路線が未成線に……
それでは、日本にはどのような未成線があるのでしょうか。具体的な例を、未成線になった経緯とあわせてご紹介しましょう。
・東京山手急行鉄道(東京都)
「第2の山手線」になるはずだった幻の環状線で、大正10(1921)年に計画されました。当時は東京郊外地域への需要が高まっていたため、現在の山手線のもうひとまわり外側をめぐるように、大井町から洲崎まで(現在の品川区から江東区まで)を結ぶ予定でした。しかし、世界大恐慌による財政難や経営陣の不祥事などが重なり、1940年に計画は断念されたのです。京王線明大前駅の構内や周辺には、現在も東京山手急行鉄道のために確保されたスペースが残されています。
・羽田―成田リニア新線(東京都)
現状の鉄道では最短でも1時間10分以上かかる羽田空港と成田空港間をリニアモーターカーで結ぶ新線計画で、実現すれば両空港間を15分で移動できると見込まれていました。しかし、年間の運営費が約1,200億円もかかるため、運賃を1万円にしても採算を取れないことがわかり、具体的な建設計画にはいたらなかったのです。構想段階で断念されたので、名残の痕跡などもない未成線です。
・中津川線(長野県)
中央アルプスに隔てられた中央本線の中津川と飯田線の飯田をトンネルで結ぶ新線計画で、昭和42(1967)年に着工されました。ところが用地買収などに手間取って工事が遅れ、1975年にほぼ同じルートを通る中央自動車道が先に開通。さらに中央新幹線が通る可能性も高くなったため、1980年に工事続行が断念されました。トンネルの計画は複数あり、貫通していた二ツ山トンネルは現在も使われないまま残されているほか、田畑の間に駅や線路のために確保されたスペースの名残が見られます。
・旧戸井線(北海道)
軍事物資運搬のため、日中戦争さなかの昭和12(1937)年に五稜郭から戸井(現在の函館市)を結ぶ路線として着工されました。残り約3kmというほぼ完成状態まで工事を進めましたが、太平洋戦争が開戦して資金も物資も不足したため、1943年に工事が中断。戦後も再開のめどが立たず、残念ながら未成線となりました。函館市には遊歩道化された線路跡や、アーチ状の橋などが残されており、未成線としても戦争遺跡としても貴重な観光資源となっています。
多くの人の夢と希望が静かに消えていった未成線たち。もしも完成していたら、人や物の流れが変わってまったく違う未来が開けていたでしょう。そんな夢物語を想像してみるのも、おもしろいかもしれませんね。
<参考サイト>
・IT media 幻の鉄道路線「未成線」に秘められた、観光開発の“伸びしろ”
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1811/02/news019.html
・LIFULL HOME'S 泡沫の夢と消えた幻の鉄道線「未成線」。廃線跡に続く新たな観光資源となるか
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00738/
・NHK 幻の鉄道“未成線” 長野ではその跡地からあるものが生まれた
https://www.nhk.or.jp/nagano/lreport/article/000/15/
・鉄道チャンネル 1100人に聞いた「実現してほしかった未成線ランキング」(関東編) 成田新幹線や空港結ぶ「リニア新線」がランクイン
https://tetsudo-ch.com/12898861.html
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